渡邉伶音インタビュー「ロス五輪では代表に不可欠な選手となって貢献したい」

【(C) B.LEAGUE】
「もっともっと成長しなければいけない」 昨年、ライジングゼファー福岡の特別指定選手としてBリーグデビューを果たし、その名を広めた渡邉伶音。今季は地元・千葉にホームを構えるアルティーリ千葉に特別指定選手として加入し、さらなる一歩を踏んだ。
福岡大学附属大濠高校では、最後のウインターカップで頂点を味わい、日本代表としても嘱望される206cmの逸材は、A千葉でどのような日々を送っているのか。驚きや学び、そして未来に向けた思いを聞いた。
――渡邉選手は千葉県柏市出身ですが、帰ってきたという感じですか?
渡邉 どちらかというと、最近は福岡空港に着いた時の方が帰ってきたなって感じがしちゃっていますね(笑) でも千葉も福岡も同じ都会ですけど、福岡は人が多くて少し気疲れする印象もあったので、そういう意味では地元に帰ってきたという感じがあるのかもしれません

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――A-xx (アックス、アルティーリ千葉のファンの総称)の印象を教えてください。
渡邉 A-xxの皆さんもすごく温かいというのが印象的です。ウォームアップの時とか、入場のタイミングでも拍手していただいたり、そういうのはあまり見ないなと感じています。 昨年ライジングゼファーにいた時に(A千葉ホームである)千葉ポートアリーナでのゲームに出まして、フリースローを打った際にすごい声援だったのを覚えています。それで2本とも外しちゃったんですけど(笑) 皆さん、本当に温かく迎えてくれてうれしいです
――ウォームアップの最後には、長谷川智也選手がおもしろいことを先にやって渡邉選手がダンクで決めるというのもA-xxを意識してですか?
渡邉 そうですね。うれしいことに智也さんが結構振ってくれるので、期待に応えなきゃいけないなと。智也さんは本当に自分に色々と教えてくださるので、すごくうれしいです

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――話が変わりますが、高校入学前には千葉J U15にいました。Bユースだから学べたと思うことはありますか?
渡邉 当時、和田拓磨(北陸高校3年、福井特別指定選手)もいたし、今の千葉ジェッツ U18もいっぱいいました。その中で、自分はすでに200cmあったので、ずっとゴール下にいてパスをもらえば、全国優勝だって夢ではなかったと思います。それでも、当時の奈良篤人ヘッドコーチ(現秋田AC)が、ボール運びから任せていただき、外からどんどんシュートを打っていいと言っていただきました。当時はポストプレーをまったくやっていなくて、U18チャンピオンシップでもゴールに対して正対してのプレーをやらせてもらいました。そこは今に繋がっているなと思いますし、本当に感謝しています
――当時、いつかはBリーグでプレーしたいという思いはありましたか?
渡邉 そうですね。物心が付いた頃にBリーグはまだなくて、NBLとbjリーグだったんですけど、地元の柏に日立(現SR渋谷)があったので見に行って、それがバスケを始めるきっかけになりました。それでBリーグができて年々レベルが上がっていって、中学生になったくらいの時には、“Bリーグでやってみたい”という思いはありましたね

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――昨季の福岡に続いて、今季はA千葉に特別指定選手として所属しています。高校とは色々と環境が違うと思いますが、特に違いを感じたことはありますか?
渡邉 高校では練習や朝起きる時間も全部まとまって、という感じです。プロではそれが自分の責任になるというか、試合に向けてコンディションを整えていかに貢献できるかというところが求められます。子供と大人の違いなのかもしれないですし、自由はいいですけど、責任がある時間が多いなというのはすごく感じますね
――少し話がそれますが、将来Bリーグでプレーしたいという小中学生が多いと思います。何かアドバイスをお願いします。
渡邉 BリーグでもNBAでもいいので、自分がかっこいいなと思ったプレーを真似してほしいと思います。自分も先輩を見てきたり、後輩に参考にされたりという中で感じるのは、早くから真似することでたくさん吸収できるということです。やってみたいことを我慢せずにチャレンジすること。ボールハンドリングなども小さいころからやっていたら、身に付くのも早いです。勝利を目指すのも大切ですが、年代的にもまずは楽しんで真似してほしいなと思います
――渡邉選手も大濠の先輩である川島悠翔選手(シアトル大)だったり、元NBAのダーク・ノビツキー(元マーベリックス)を参考にしていると以前、伺ったことがあります。
渡邉 そうですね。悠翔さんはずっと身近にいてやってきたんで、全然辿り着けてはないですけど、悠翔さんのダイナミックなプレーを自分としてもずっと真似していましたね。ノビツキーに関しては、当時のコーチにたまたま見せてもらった初めてのNBA選手でした。外からシュートを打つスタイルにつながっていると思います。二人とも憧れというのも変わりません。加えて最近だとマジックのフランツ・バグナー(ドイツ代表)もですね。同じ3番ポジションで208cmあって、フィジカルも強くてハンドリングもいい。自分としては、そういう選手を目指していきたいと思っています

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――ところで、A千葉に帯同してみて、一番驚いたことはなんでしょうか?
渡邉 かなり高い強度を保って、前からアグレッシブにディフェンスをやるということが初めてでした。それを外国籍の選手もしっかりプレッシャーをかけて、ルーズボールに対して執念を見せてというところは、B2でトップにいる理由なんだろうなと思っています。ずっと勝ち続けるチームの大変さもあるはずですが、前から頑張るというところに気持ちがあるからやり続けられるんだなというのは、学んだことです
――そういった中で、課題と感じていることはなんですか?
渡邉 アルティーリでは3番ポジションをやらせてもらっています。Bリーグでも自分の身長で3番はあまりないと思うので、先ほどいったアグレッシブなディフェンスもそうですし、高さを活かしたオールラウンドなプレーも求められていると感じています。 課題として思いつくのは、やはりフィジカルの部分です。アルティーリもそうですし、代表でもそうですが、試合練習の中では点数を取れていても、押し負けてしまうと試合になりません。そこは昨年から感じているところなんですが、高校では圧倒できてもBリーグは2段階上くらいのレベルなので、まだ未熟だなと感じています
――先ほど和田選手の名前が出ましたが、同級生でBリーグを経験している選手が多いですね。連絡を取り合ったりしますか?
渡邉 リク(瀬川琉久/千葉J)に関しては、代表でも同じことが多かったですし、結構連絡取り合ってますね。自分はジェッツ U15にいたので、練習場のロックアイスベースも知っているので、冗談で『俺先輩やから、ロックアイスでわからないことあったらみんな教えてやるから』とメッセージを送ったりしています(笑)
――おもしろい(笑) 仲いいからこそですね。この1年間ということでは、福岡での特別指定選手があり、U18アジアカップがあり、男子日本代表でのアジアカップ予選、ウインターカップ優勝(※)など、多くの経験を積んでいます。その中でどんなことがプラスになりましたか?
渡邉 昔の自分のプレーを見返すと成長していると感じるところはあります。ただ、色々な機会を経験している以上、もっともっと成長しなければいけないなというのが一番です。アルティーリに来て最後の時間帯に出させていただいている時も、色々な経験をしている分、他の人と同じじゃダメだなという思いがあります。これができなかったとかはあまり思わないんですが、もっと成長しないとという思いが強いですね
※FIBA U18 アジアカップ 2024、FIBAアジアカップ2025 予選、SoftBankウインターカップ2024
――最後に、今後のビジョンについて教えてください。
渡邉 高校での活動が終わってみて考えるのが、大濠では何かが終わるとすぐに次の目標というのが決まっていたということです。卒業して、特に今の期間は直近に大きなものがなかなかなくて、難しいというのがあるのですが、自分としてはロサンゼルス2028オリンピックで代表のメンバーに選ばれるだけではなくて、不可欠な選手となって貢献するというのが一つあります。そこに向けて何が必要なのかを考えて、頑張りたいと思います