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『スタッツで見るBリーグ』スタッツの父が示した勝利の方程式!4Factors徹底分析

2024.12.26

見どころ・レポート

りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズンも21試合を消化し、いよいよ本格的な順位争いが始まる。「オフェンスが客を呼び、ディフェンスが勝利を呼ぶ」というNFLの格言があるが、では実際にチームの勝利を決定づける要素とは何なのだろうか。
今回は、NBAで初めて統計学者として雇用され「スタッツの父」と呼ばれたディーン・オリバー氏が確立した4つの指標「4Factors」を用いて、各チームを分析していく。シュート効率、ターンオーバー、リバウンド、フリースロー獲得 - これら4つの要素がチームの勝敗にどのように影響しているのか。数字が語る勝利の方程式に迫っていきたい。

4Factorsとは?

バスケットボールにおける統計分析の第一人者であるディーン・オリバー氏が提唱した、チームの攻撃力を評価する4つの指標である。
1. EFG%(実質シュート決定率)
2. TOV%(ターンオーバー率)
3. OR%(オフェンスリバウンド獲得率)
4. FTR(フリースロー獲得率)
それぞれの指標について詳しく解説していく。  

EFG%(実質シュート決定率)

勝利に最も影響を与えると言われている指標である。Bリーグ公式サイトのスタッツ用語解説では、「3ポイントシュートに1.5倍の重みづけをした、補正済みのフィールドゴール成功率」と定義されている。
計算式:(フィールドゴール成功数+0.5×3ポイントシュート成功数)÷フィールドゴール試投数
通常のFG%(フィールドゴール成功率)との違いを例で説明する。 選手Aと選手Bがそれぞれ10本のシュートを放ったとする。
● 選手A:2ポイントシュート10本中5本成功(FG%50%、得点10点)
● 選手B:2ポイントシュート4本中2本成功、3ポイントシュート6本中2本成功(FG%40%、得点10点)
FG%だけを見ると選手Aの方が効率が良いように見えるが、実際の得点は同じ10点である。3ポイントシュートは難度が高く成功率は下がりやすいものの、1本あたりの期待得点は高くなる。EFG%は、この3ポイントシュートの価値を適切に評価するための指標である。

TOV%(ターンオーバー率)

シュートを打つ前に攻撃権を失ってしまう割合を示す指標である。ターンオーバーはシュートチャンスを失うだけでなく、相手の速攻を許す可能性もあるため、試合の勝敗を大きく左右する。
計算式:ターンオーバー数÷自チームの総攻撃回数

OR%(オフェンスリバウンド獲得率)

シュートが外れた際に攻撃権を維持できた割合を示す指標である。オフェンスリバウンドを獲得することで、追加の得点チャンスを得ることができる。
計算式:自チームのオフェンスリバウンド数÷(自チームのオフェンスリバウンド数+相手のディフェンスリバウンド数)

FTR(フリースロー獲得率)

フィールドゴール試投数に対するフリースロー試投数の比率を示す指標である。フリースローは最も確実な得点方法であり、相手チームのファウルトラブルを誘発する効果もある。
計算式:フリースロー試投数÷フィールドゴール試投数  

これら4つの指標の重要度は、オリバー氏によって以下のように示されている:
● EFG%で相手を上回る:10ポイント相当
● TOV%で相手を下回る:5-6ポイント相当
● OR%で相手を上回る:4-5ポイント相当
● FTRで相手を上回る:2-3ポイント相当
例えば、EFG%で相手に劣って10ポイント分のハンデを負っても、他の3つの指標で相手を上回れば、試合に勝利できる可能性があるということである。

前置きが長くなってしまったが、さっそくランキングを見ていこう。
 

1. EFG%(実質シュート決定率)

順位 チーム eFG% 12節終了時点順位

1位

宇都宮

55.48%

リーグ3位

2位

三遠

55.32%

リーグ2位

3位

群馬

53.88%

リーグ7位

4位

島根

53.80%

リーグ5位

5位

京都

53.76%

リーグ12位

6位

三河

53.40%

リーグ8位

7位

千葉J

53.03%

リーグ4位

8位

茨城

51.54%

リーグ19位

9位

SR渋谷

51.39%

リーグ9位

10位

大阪

51.35%

リーグ11位

11位

佐賀

51.02%

リーグ18位

12位

川崎

50.47%

リーグ23位

13位

名古屋D

50.45%

リーグ13位

14位

FE名古屋

50.22%

リーグ17位

15位

A東京

50.20%

リーグ1位

16位

広島

50.20%

リーグ15位

17位

長崎

49.90%

リーグ14位

18位

越谷

49.83%

リーグ21位

19位

琉球

49.61%

リーグ6位

20位

北海道

48.59%

リーグ16位

21位

横浜BC

47.98%

リーグ20位

22位

滋賀

47.66%

リーグ18位

23位

秋田

46.88%

リーグ10位

24位

仙台

46.39%

リーグ22位

 

 

 

 

 

平均

50.93%

 

 

2. TOV%(ターンオーバー率)

このスタッツは上位チームの方がネガディブな結果となっている。
順位 チーム TOV% 12節終了時点順位

1位

長崎

20.2%

リーグ14位

2位

越谷

20.0%

リーグ21位

3位

大阪

19.3%

リーグ11位

4位

滋賀

19.1%

リーグ24位

5位

京都

19.1%

リーグ12位

6位

FE名古屋

18.9%

リーグ17位

7位

北海道

18.4%

リーグ16位

8位

秋田

18.0%

リーグ10位

9位

仙台

17.9%

リーグ22位

10位

川崎

17.8%

リーグ23位

11位

茨城

17.8%

リーグ19位

12位

群馬

17.5%

リーグ7位

13位

島根

17.5%

リーグ5位

14位

佐賀

17.4%

リーグ18位

15位

琉球

17.3%

リーグ16位

16位

広島

16.6%

リーグ15位

17位

横浜BC

16.4%

リーグ20位

18位

三河

16.1%

リーグ8位

19位

SR渋谷

16.1%

リーグ9位

20位

名古屋D

15.7%

リーグ13位

21位

A東京

15.5%

リーグ1位

22位

千葉J

15.2%

リーグ4位

23位

宇都宮

15.1%

リーグ3位

24位

三遠

14.8%

リーグ2位

 

 

 

 

 

平均

17.41%

 

 

3. OR%(オフェンスリバウンド獲得率)

順位 チーム OR% 12節終了時点順位

1位

琉球

39.31%

リーグ6位

2位

三遠

37.05%

リーグ2位

3位

島根

35.88%

リーグ5位

4位

大阪

34.98%

リーグ11位

5位

A東京

34.25%

リーグ1位

6位

群馬

33.23%

リーグ7位

7位

京都

33.10%

リーグ12位

8位

名古屋D

31.83%

リーグ13位

9位

仙台

31.39%

リーグ22位

10位

秋田

31.09%

リーグ10位

11位

滋賀

30.96%

リーグ24位

12位

広島

30.19%

リーグ15位

13位

越谷

29.39%

リーグ21位

14位

SR渋谷

29.26%

リーグ9位

15位

FE名古屋

29.14%

リーグ17位

16位

北海道

28.23%

リーグ16位

17位

三河

27.53%

リーグ8位

18位

長崎

27.28%

リーグ14位

19位

佐賀

27.06%

リーグ18位

20位

横浜BC

26.77%

リーグ20位

21位

千葉J

26.40%

リーグ4位

22位

宇都宮

26.35%

リーグ3位

23位

川崎

24.85%

リーグ23位

24位

茨城

24.31%

リーグ19位

 

 

 

 

 

平均

30.41%

 

 

4. FTR(フリースロー獲得率)

順位 チーム FTR 12節終了時点順位

1位

三遠

35.19%

リーグ2位

2位

A東京

31.85%

リーグ1位

3位

大阪

30.84%

リーグ11位

4位

佐賀

30.48%

リーグ18位

5位

越谷

30.11%

リーグ21位

6位

群馬

29.63%

リーグ7位

7位

琉球

29.56%

リーグ6位

8位

SR渋谷

28.71%

リーグ9位

9位

千葉J

28.55%

リーグ4位

10位

京都

28.28%

リーグ12位

11位

宇都宮

28.00%

リーグ3位

12位

三河

27.97%

リーグ8位

13位

名古屋D

27.97%

リーグ13位

14位

秋田

27.61%

リーグ10位

15位

島根

26.73%

リーグ5位

16位

長崎

25.79%

リーグ14位

17位

滋賀

24.97%

リーグ24位

18位

川崎

24.70%

リーグ23位

19位

茨城

24.15%

リーグ19位

20位

横浜BC

23.17%

リーグ20位

21位

FE名古屋

22.64%

リーグ17位

22位

北海道

21.84%

リーグ16位

23位

仙台

21.64%

リーグ22位

24位

広島

21.14%

リーグ15位

 

 

 

 

 

平均

27.15%

 

 

注目チーム


アルバルク東京

4Factors分析から見えてくるアルバルク東京の興味深い特徴がある。最も重要な指標とされるEFG%(実質シュート決定率)はリーグ15位と低迷しているにも関わらず、チームはリーグ首位の座を守り続けている。
では、なぜ首位に立ち続けることができているのか。残りの3つの指標を見ていくと、その理由が見えてくる。
TOV%(ターンオーバー率):リーグ4位
ORB%(オフェンスリバウンド獲得率):リーグ5位
FTR(フリースロー獲得率):リーグ2位

これらの数字が物語るのは、極めて効率的な攻撃戦術だ。シュートの成功率は高くないものの、ミスを最小限に抑え、外れたシュートからセカンドチャンスを創出。さらに、最も確実な得点源であるフリースローを効果的に獲得している。
このスタイルの最大の強みは、選手のコンディションに左右されやすいシュート成功率に依存していない点だ。つまり、「シュートの調子が悪い日でも勝てる」チーム作りができているということである。
(なお、アルバルク東京の特徴として見逃せないディフェンス面の分析については、次回の記事で解説する予定である)
 


京都ハンナリーズ

4Factors分析から浮かび上がる「隠れた強豪」として、現在12位の京都ハンナリーズに注目したい。
主要指標を見ていくと:
EFG%(実質シュート決定率):リーグ5位
ORB%(オフェンスリバウンド獲得率):リーグ7位
FTR(フリースロー獲得率):リーグ10位
これらの数値は、いずれもリーグ上位に位置している。唯一の課題は、TOV%(ターンオーバー率)がリーグワースト5位という点だ。
しかし、このターンオーバーの多さには、合理的な説明がつく。一般的に、シーズン序盤はチーム全体でターンオーバーが増加する傾向にある。特に京都は今季、6名もの新規選手を加入させており、チームとしての連携がまだ発展途上の段階にあると考えられる。
つまり、現在の順位は一時的なものである可能性が高い。シーズンが進むにつれてターンオーバーが減少し、他の好調な指標が活きてくれば、順位を大きく上げる可能性を秘めているチームと言えるだろう。

まとめ

現在のリーグ上位8チーム(チャンピオンシップ圏内)が、各指標の上位にどれだけ含まれているかを見てみよう。
● EFG%(実質シュート決定率):上位8チーム中6チーム
● TOV%(ターンオーバー率):上位8チーム中5チーム
● ORB%(オフェンスリバウンド獲得率):上位8チーム中5チーム
● FTR(フリースロー獲得率):上位8チーム中4チーム
この分布から、4Factorsの各指標とチームの順位には明確な相関関係があることがわかる。つまり、これらの指標を分析することで、チームの実力や今後の可能性を客観的に評価することができるのだ。


余談ではあるが、昨シーズンの優勝チーム・広島ドラゴンフライズと準優勝チーム・琉球ゴールデンキングスの4Factorsはこのようになっていた。
 

広島 23-24順位 23-24スタッツ

eFG%

5位

52.58%

TOV%

16位

15.93%

ORB%

9位

31.47%

FT獲得率

13位

25.74%

 
琉球 23-24順位 23-24スタッツ

eFG%

11位

51.82%

TOV%

11位

16.39%

ORB%

3位

36.05%

FT獲得率

7位

28.42%

 



文=しんたろう 監修=バスケット・カウント

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