“夢みたいな物語”を歩んできたホーキンソン「次の世代のためにも…」日本代表とBリーグへの思い語る
日本代表ではインサイドの要として活躍するSR渋谷のジョシュ・ホーキンソン【(C)fiba.basketball】
躍進を続けるバスケットボール男子日本代表の主力であり、B.LEAGUEを代表するスター選手の一人でもあるジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)。
ワシントン州立大学を卒業後の2017年にBリーグでプロデビューを果たすと、2023年には日本国籍を取得し、FIBAバスケットボールワールドカップ2023、パリ2024オリンピックと、主要国際大会で大車輪の活躍を見せてきた。
“鷹ちゃん”の愛称で親しまれるホーキンソンは、どのような思いでワールドカップ、オリンピック、Bリーグを戦ってきたのか。また、2028年のロサンゼルスオリンピック、成長を続けるBリーグ、10月に開幕した「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON」へ向けて、どのような思いを抱いているのか、語ってもらった。
■ NBA挑戦を期待する声も「将来はわからないけど…」
――オリンピックはワールドカップよりハイレベルなチームが集う世界最高峰の大会でした。今回のパリ五輪にはどのような思いで臨んでいましたか。
ホーキンソンもちろんオリンピックのほうがハイレベルな12カ国が揃っていますし、ワールドカップのときにドイツ代表と試合をして(63―81で敗戦)、ヨーロッパの主要な強豪国がどれだけハイレベルなのかもわかっていました。オリンピックへ向けて、より綿密に準備していかないと厳しい戦いになるということはわかっていたので、しっかり準備して臨むことを心がけていました。
――個人的にワールドカップよりもさらにモチベーションが上がるようなことはなかったですか。
ホーキンソンこれといって何か大きな要素があってモチベーションが変わったことはなかったです。ワールドカップやオリンピックは、世界の中で最もレベルの高いコンペティションということはわかっていました。自分がワールドカップで強豪チーム相手にもしっかりやれることを証明できていたので、それをもう一度やるだけだと考えていました。何かが起点になって「よしやるぞ!」とスイッチが入ったことはなく、再び自分の力を証明する舞台が来たなという印象でした。
――ワールドカップに続きパリオリンピックでも日本代表を支える大車輪の活躍でした。
ホーキンソンまず、ワールドカップに関してはホスト国ということで、沖縄アリーナで完全ホームの状況で試合をすることができました。お客さんを見たらエナジーもすごかったですし、今までで最も楽しかったゲームの一つでした。お客さんたちの顔を見たら、日本を代表してプレーできたことがすごく光栄でしたし、お客さんたちが歓喜で泣いていたり、笑顔をもたらしてくれている。すごく思い出深い大会です。
昨夏のW杯では大会7位の21.0得点、同2位の10.8リバウンド、同2位の貢献度28.6を記録したホーキンソン【(C)fiba.basketball】
逆にオリンピックでは、もちろん日本から現地に応援に駆けつけてくださった方もいたんですけど、特にフランス戦は完全アウェーの状況。観衆の熱もすごいですし、2万人のアリーナがフランス一色で埋め尽くされていて、大学時代の完全アウェーのような状況を久しぶりに味わえました。ワールドカップとオリンピックでは真逆の経験をできたのですごく楽しかったです。
――パリオリンピックで経験したような完全アウェーの雰囲気は楽しめるタイプですか。
ホーキンソン完全アウェーのような環境も楽しむようにしています。ホームチームを応援する大歓声の中で、NBAではよくアウェーチームの選手が決めてシーンと静まる瞬間がありますよね。自分がプレーしていてああいった瞬間が訪れたときはすごく気持ちがいいんです。お客さんを黙らせるようなプレーができるという点では、ホームとはまた違った意味で楽しめましたね。
――大会後には好スタッツを記録していたこともあり、国内外から「ホーキンソンはNBAでプレーできる」という声もありました。
ホーキンソン自分がいい成績を残して、家族や友人などから、レブロン・ジェームズ、ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、こういった選手たちよりもスタッツでは上にいるということを称賛されたり、メディアでも報道されて、すごく楽しかったし光栄でした。オリンピックでスタッツ上いいプレーができたというのは、個人的にもすごく良かったです。
パリ五輪でも大会7位の18.3得点、同2位の9.7リバウンド、同3位の貢献度24.7と圧巻のパフォーマンスを見せたホーキンソン【(C)fiba.basketball】
ただ、自分はサンロッカーズ渋谷の選手なので、もちろん現行の契約を全うしなければいけないところもあります。こういったNBA選手たちと並ぶスタッツを残せているので、将来はどうなるかわからないですけど、その時が来たら夢にチャレンジできるように、今はとにかくサンロッカーズ渋谷、日本でしっかりとプレーし続けるということが今の目標です。
――日本代表はパリ五輪で一段落。今度はロス2028オリンピックへの道のりが始まります。
ホーキンソンアジアカップなども含めていろいろな大会があります。次のオリンピックは4年後。パリオリンピックを終えた今、率直に4年後というのはまだ先のことだなと感じています。ただ、自分にとっては次のオリンピックが年齢的にも最後のチャンスかもしれないということもあるので、長い目で見たらもちろん出たいです。
日本代表の成長を助けるという意味では、アジアカップ、ワールドカップであったり、4年後のロス五輪までにいくつか大きな大会があるので、そこは長期的目標と短期的目標を明確にしていきたいです。まずは11月と2月にアジアカップ予選があるので、そこにしっかり照準を合わせてコツコツとやっていけば、自ずと次の目標に向かっていける…そういった形で段階を踏んで進んでいきたいと思います。
■「昔は空調がない施設で試合したり…。Bリーグの成長はすさまじい」
――気づけばBリーグ8年目です。来日してから今まで、どんな部分で成長できたと感じますか。
ホーキンソン8年前にファイティングイーグルス名古屋へ入団したときは、今よりも華奢でした。日本の外国籍のレギュレーションでは重いビッグマンが多いので、来日当初は5番ポジションの選手に対峙するときは少し苦労しましたね。ただ、信州ブレイブウォリアーズに移籍してから、ディフェンス力を向上できたと思います。勝久マイケルヘッドコーチがいて、当時は選手だったアンソニー・マクヘンリー(2023年に現役引退/現B1琉球アシスタントコーチ)、今もプレーしているウェイン・マーシャル選手(現B2信州所属)といった日本のレジェンドと言われるようなベテランの外国籍選手から、どのように守るか、どのように身体を使うか、ディフェンスの構築という部分をたくさん学びました。振り返ってみれば、自分にとって信州での3年間がすごく大きかったです。オフェンスに関しては、所属クラブによって多少役割が変わる部分はありますが、プロキャリアをスタートさせたときから大きな変化はなく、主にディフェンスが日本に来てからかなり向上したと感じています。
――日本代表選手たちは「バスケ界を盛り上げたい」と口にしてきました。2023年に帰化したホーキンソン選手は、どのような思いでプレーされているのでしょうか。
ホーキンソン自分のキャリアを振り返ってみると、B2からスタートして、B1に移籍して、帰化をして、日本代表の中心選手になって、という夢みたいな物語が続いています。8年前にこういったキャリアを歩むとはまったく想像していなかったです。一般的にはサクセスストーリーを進んでいるように見えるかもしれませんが、今でも「もっと良い選手になりたい」という思いは変わらないですし、それが自分のモチベーションになっています。
これまで自分自身のステップアップをしてきましたが、日本バスケの成長の助けになりたいとも思っています。そのためにも自分が毎日ベストプレーヤーでいるということを目標にしていますし、誰か自分を支えてくれている人たちがいる限り、そういう人たちを代表してプレーすることを心がけています。次の世代の子たちのためにも、もっとバスケットボールが人気になる、もっとたくさんの人たちがプレーをする、そういうことに貢献できるような“スター選手”のような立ち回りができたらいいなと思っています。
長崎のハピアリで開幕節を戦ったSR渋谷。今シーズンは“日本代表対決”も注目【(C)B.LEAGUE】
――“夢のアリーナ”が続々と建設されるなど、Bリーグは急速に成長しています。選手という立場から、このリーグの変化はどう見えているのでしょうか。
ホーキンソンBリーグの成長は本当に目まぐるしいものがあると思います。自分は特にB2からキャリアをスタートしているので、昔を振り返ると、例えば空調がない施設で試合をしたり、あまり環境が整っていない体育館でプレーをすることもありました。いまB1でずっとプレーしている選手たちのなかには、そういった環境で戦ったことがない選手もちらほらいるだろうなと思ったりもします。Bリーグの成長は本当にすさまじくて、お客さんのパッションであったり、特にこの2、3シーズンはものすごくリーグが熱くなってきています。新しいアリーナもできて、アウェーゲームの際には地域との連係もすごいなと感じます。それぞれのアリーナが独特で、各クラブのファン・ブースターも特徴的な応援をする。お客さんの特別な感情を乗せて、新しいアリーナを建てて、「これが俺たちのチャームポイントだ」と押し出しているチームもたくさんあると思います。そういった遠征も楽しんで、各チームの特色なども感じながら試合に臨むようにしています。
――今シーズンの開幕戦では完成間もないハピネスアリーナ(長崎)でプレーし、日本代表のチームメイートである馬場雄大選手ともマッチアップしました。
ホーキンソンハピネスアリーナだけでなく長崎市に行くこと自体が初めてだったので、長崎という街も含めて素晴らしい場所だなと遠征を楽しんでいました。ただアリーナが大きいだけじゃなくて、選手のプレーがよく見えるスタンドの構造も素晴らしいなと思いましたね。
うちのチームはスイッチディフェンスが多くて、ババとマッチアップすることがありました。特にGAME1ではショットクロックぎりぎりで一対一を仕掛けてきて決められてしまいましたが、GAME2は向こうもスイッチしてきてやり返す場面がありました。代表で仲良くしていたマイキー(川真田紘也)ともマッチアップする機会があって、すごく楽しい瞬間でした。
――今シーズンは日本代表でチームメイートだった渡邊雄太選手が千葉ジェッツに加入しました。シーズン終盤の第31節(4月12日・同13日)に対戦します。
ホーキンソン元NBA選手がBリーグに入ってきてくれるということは、日本のバスケットボール業界にとって非常に大きなことだと思います。彼は衰えていないですし、ベテランというわけでもない。プライムタイム(脂が乗っている時期)という非常にいいタイミングで戻ってきてくれたので、リーグ自体の競争力を上げてくれる選手だと思います。個人的には彼とは代表のチームメイートとしてプレーしてきたので、プレシーズンゲームで彼とマッチアップする時間も楽しめましたし、レギュラーシーズンでは4月まで対戦することはないですけど、また彼とマッチアップする機会があれば非常に楽しみです。
SR渋谷加入2年目の今季から副キャプテンも務めるホーキンソン【(C)B.LEAGUE】
――サンロッカーズ渋谷としては大きな期待を寄せられるシーズンです。加入2年目のホーキンソン選手が感じるチャンピオンシップ(CS)進出へのキーポイントは何でしょうか。
ホーキンソン昨シーズン、シーホース三河と1ゲーム差、千葉ジェッツとは得失点5点差でCS進出を逃したことを踏まえ、全てのゲームが重要になってくると思います。それを達成するためにはチームメイート、ヘッドコーチ、それを支えるコーチングスタッフなど含め、自分たちを信じて戦っていかないといけないと思います。自分たちはディフェンスのチームなので、しっかりと相手の守るべきところを抑えて、自分たちは効率よく点を取る、そういったことを継続して前に進んでいきたいです。新加入選手もいい選手が入ってきてくれましたし、コアとなる選手たちは残ってくれたということもあります。中地区は激戦ですけど、昨シーズンよりも多くの勝ちを積み重ねていけるという自信はありますし、昨シーズン達成できなかったCSを勝ち取りたいと思います。
――最後に今シーズンの目標と、ファンへのメッセージをお願いします。
ホーキンソン目標は「毎日いい選手になる」ということを続けていくことです。日々ベストを更新していくことは忘れずに取り組んでいきたいと思っています。チームとしては、まずCSに出場しないとBリーグチャンピオンになるチャンスすらないので、まずはその舞台に立てるように一つひとつ積み上げていきたいと思います。
ファンの皆さんのサポートは本当に素晴らしいです。大きな期待を寄せてくれていると思いますので、そこに応えられるように頑張ります。青山学院記念館でのホームゲームもあるので、私自身に対してもそうですが、サンロッカーズ渋谷というチームを応援していただけるとうれしいです。引き続き応援よろしくお願いします。
飽くなき向上心を持つホーキンソンは今季もSR渋谷と日本代表のために走り続ける【(C)B.LEAGUE】
(取材・文=バスケットボールキング/藤田皓己)