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B.MAGAZINE

渡邊雄太加入の千葉ジェッツに最注目!“魔境”の中地区、実力者ぞろいの西地区を勝ち抜くのは…?【Bリーグ開幕展望/B1編】

2024.09.25

見どころ・レポート

りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズンの開幕が眼前に迫っている。各クラブが数試合のプレシーズンあるいはカップ戦を戦う中で、戦い方も徐々に見えてきた部分もある。本稿では今季のB1の展望をお届けしていく。



*東地区は2トップがけん引するか

※2023-24シーズンの写真を使用



まずは東地区だ。この地区をけん引していくのは千葉ジェッツと宇都宮ブレックスだろう。千葉Jは渡邊雄太の加入が一大ニュースとして報道されたが、彼以外の補強も見事だった。

中でも名前を挙げるべきはディー・ジェイ・ホグだ。昨季はオーストラリアNBLのシドニー・キングスでプレーし、SFとPFの両ポジションを担える器用さが売り。サンロッカーズ渋谷とのプレシーズンゲームではいきなり22得点を記録し、その得点方法もインサイドの合わせやドライブ、3Pシュートと非常に多彩だ。

2Qには短時間ではあったが、渡邊(206cm)がSG、ホグ(207cm)がSF、インサイドにマイケル・オウ(208cm)とジョン・ムーニー(206cm)を据える“4ビッグ”を試す時間帯もあった。3ビッグは昨季までのBリーグで試合を優位に進める意味で多くのチームが採用したが、渡邊とホグが可能にした4ビッグは特にディフェンスとリバウンド面で大きなアドバンテージになる。

彼ら4人と共にコートに立った富樫勇樹は「いろいろなラインナップが出てくると思いますし、クリス(クリストファー・スミス)が2番で雄太が3番という時間帯も増えると思いますし、これだけのメンバーがいる中でどうリズムの良さを引き出すのかは逆に難しい。ただ、ミスマッチが簡単にできますし、ディフェンスではスイッチしやすくなります。時間帯や相手によって使い分けていきたい」と話していた。

大型補強で超強力ロスターを組み上げた千葉Jに対して、宇都宮はこれまでと同様に既存メンバーを主体にブレックス・メンタリティを継承している。日本代表の比江島慎や昨季BリーグのMVPに輝いたD.J・ニュービル、遠藤祐亮、アイザック・フォトゥ、グラント・ジェレットら核となる選手は変わらず、新加入選手は司令塔の石川裕大ただ一人だ。開幕戦ではいきなり千葉Jのホームに乗り込む形となり、それが開幕節の最注目カードとなるだろう。

ロスターの中で期待したいのが高島紳司や小川敦也ら若手の成長だ。特に高島は昨季大きくプレータイムを伸ばし、相手の“起点潰し”としてディフェンスで大いに奮闘。得点力に磨きがよりかかればチームの大きな助けになる。小川もニュービルから日々フィニッシュスキルやゲームメイクを学んで成長しており、彼らがいかに戦力として一本立ちできるかは今季の宇都宮の結果に関わる大きな要素になりそうだ。

彼らを追うダークホースに挙げたいのが、群馬クレインサンダーズ。群馬は千葉J同様にロスターを大きく入れ替え、初のチャンピオンシップ(CS)※1進出を狙っている。最大の変化は昨季広島ドラゴンフライズを初のB1優勝に導いたカイル・ミリングを新ヘッドコーチとして招へいしたこと。3ビッグを軸としたマッチアップゾーンで相手を苦しめるなど、奇策を武器に優勝を手にした指揮官は、群馬でその再現を狙う。

他にも広島時代に共闘した辻直人や、元NBA選手のトレイ・ジョーンズ、帰化選手のマイケル・パーカーらコアメンバーは変わらず。そこに長年、川崎ブレイブサンダースをけん引してきた藤井祐眞、リーグ屈指のシューター細川一輝、そして現役ドイツ代表で、柔軟性のあるインサイドプレーヤーのヨハネス・ティーマンを加えた。大きな変革だけにチームがなじむには一定の時間を要するだろうが、各ポジションにバランス良く実力者がおり、かつサイズのある選手がそろっている。

この3クラブをレバンガ北海道、仙台89ERS、秋田ノーザンハピネッツ、茨城ロボッツ、越谷アルファーズが追いかけていくことになるだろう。とりわけ仙台はブラジル代表のクリスティアーノ・フェリシオや多嶋朝飛ら経験豊富な選手を迎え、シーズン前の東北カップで2年連続の優勝。虎視眈々と上位進出を狙っている。そしてB1初挑戦となる越谷がどんな戦いを繰り広げるのかも注目したい。



*“魔境”の中地区は全8クラブにCS※1の可能性あり?

※2023-24シーズンの写真を使用



続いて中地区だ。今季の地区分けで、昇格組の滋賀レイクスと越谷アルファーズがそれぞれ西地区と東地区に入ったことで、昨季東地区だったアルバルク東京と同西地区だった名古屋ダイヤモンドドルフィンズが中地区に移動。言うまでもなく両者は昨季、激戦区からCS※2出場を果たした実力者だ(A東京はB1東地区2位・CS出場順位4位、名古屋DはB1西地区1位・CS出場順位3位)。

昨季の中地区は三遠ネオフェニックスが頭ひとつ抜けたレギュラーシーズンを送ったものの、2位のシーホース三河からサンロッカーズ渋谷、川崎ブレイブサンダース、ファイティングイーグルス名古屋までの4クラブが最終的に3ゲーム差以内でCS※2争いを繰り広げた。そんな地区にA東京と名古屋Dが加わるのだから、まさに“魔境”である。

その中で三遠と川崎、名古屋Dは、昨季からロスターやチームスタイルが一新。三遠は吉井裕鷹とデイビッド・ヌワバが加入した代わりに、攻防の要だったコティ・クラークとシューターの金丸晃輔、細川一輝が退団。「中地区はよりフィジカルな戦いになりそうなので、僕らもバチバチ体を当てて戦いたい」という吉井の言葉どおり、昨季よりはペースと3P試投数が落ちる可能性はあるものの、より当たり合いを好むフィジカルなチームになるかもしれない。

川崎はニック・ファジーカスの引退に伴って一時代が終焉。佐藤賢次前HCと藤井祐眞(群馬)も退団したことで、今までとは全く異なるチームとなる。新任のロネン・ギンズブルグ HCは長年チェコ代表を率いた人物で、クラブとしては初の外国籍ヘッドコーチ。これまでファジーカスを起点にしたハーフコット・バスケで戦ってきたスタイルから、運動量を生かしたハイペースなスタイルにシフト。オープンコートで躍動するロスコ・アレンや元NBA選手のアリゼ・ジョンソンら機動力に優れたビッグマンをガード陣がどう操るかがカギを握りそうだ。

名古屋Dはレイ・パークスジュニアに須田侑太郎(三河)、伊藤達哉(琉球)、ティム・ソアレス(越谷)、ジョシュア・スミス(福岡)と、ローテーションプレーヤーがごっそり退団。代わって今村佳太やアイザイア・マーフィー、元NBA選手のザイラン・チータムらが加わった。机上の計算では上々の補強ができたとしても、これだけ大きなロスターチェンジがあってはチームがかみ合うのに時間を要するはず。その間にどれだけ白星を重ねながらケミストリーを構築するかが重要になる。川崎も三遠もしかり、大幅なロスター変更をしたチームは序盤で負けが混んでしまうことが怖い。中盤以降の巻き返しに大きな労力を割く、あるいはその時点でチャンピオンシップ※1の可能性が薄くなってしまいかねないからだ。そうした面でも今季の中地区はよりハードな戦いになるだろう。

裏を返せば、継続路線のA東京、SR渋谷、三河、FE名古屋は今季の中地区を戦う上ではアドバンテージがあると言えるだろう。昨季CS※2争いをしたこの7クラブに対して、NBA挑戦のために河村勇輝が退団し、指揮官を含めて新たな布陣を組む横浜ビー・コルセアーズがどう戦っていくか。プレシーズンゲームでは川崎相手に点取り合戦を演じており、新加入の外国籍選手3人と若手のステップアップ次第では台風の目になれるかもしれない。全8クラブがCS※1争いをできる可能性を秘めており、昨季以上に行方の分からぬ激戦が繰り広げられそうだ。



*広島、琉球、島根…西地区は今季も混戦の予感

※2023-24シーズンの写真を使用



最後に西地区を展望していこう。まず注目すべきは昨季B1王者となった広島ドラゴンフライズだ。彼らは昨季終了からほどなくして、Bリーグを代表して「バスケットボール チャンピオンズリーグ アジア」に出場。そのため、シーズン後の早いタイミングで主力のほとんどと契約継続のサインをし、チームを作ってきた。ただ、ロスターに大きな変更はないものの、ヘッドコーチがカイル・ミリング(群馬)から昨季現役引退をしたばかりの朝山正悟になった点は未知数だ。

朝山ヘッドコーチはクラブがB2で戦っていた2017-18シーズン当時、チーム事情によって一時的に選手兼ヘッドコーチを務めていた時期がある。その後も選手兼アソシエイトコーチとしてチームを支えてきたものの、プレーヤー上がり1年目からB1の、それも昨季のチャンピオンチームを率いるとなると、その手腕に注目が集まる。メンバーが変わっていない以上、基本的には昨季の戦い方がベースになるだろうが、他クラブからのマークがきつくなる中でどんな戦術を敷くのか興味深い。

次に注目したいのが琉球ゴールデンキングス。リーグ有数のショットクリエイターであった今村佳太(名古屋D)が退団したものの、その穴を埋めるキーパーソンとして、昨年のインカレで最優秀選手に選ばれた脇真大には大きな期待がかかる。今季がルーキーイヤーとなる23歳は、体の強さを生かしたドライブやトランジションで力を発揮する。ハンドラーとして貢献していた牧隼利(大阪)も移籍したことを考えると、今村と牧の両ポジションの後釜となる脇のステップアップは必要不可欠とも言えるだろう。フロントラインは今季も引き続き琉球の強みとなる。アレン・ダーラムが退団したとはいえ、ジャック・クーリーとアレックス・カークは健在で、中でも外でも柔軟なプレーができるケヴェ・アルマの存在もチームの戦術に深みをもたらすはずだ。また9月頭に右ひらめ筋肉離れとなり、全治2~3週間と診断されたヴィック・ローがどの時点で戦列に復帰するかも注目したい。
琉球は9月17日の時点でロスタースポットを1つ空けている。開幕までにもう一人の選手を加える可能性もあり、そこにも注目しながら開幕に備えたいところだ。

西地区で大きな補強をしたクラブといえば島根スサノオマジック。絶対的エースだったペリン・ビュフォードが退団したが、三遠から万能型ビッグマンのコティ・クラークを獲得。さらにサンロッカーズ渋谷を長く支えた元NBA選手のジェームズ・マイケル・マカドゥを加え、インサイドの厚みは昨季と同等かそれ以上だ。日本人選手に大きな入れ替えはなく、キーピースのいくつかを入れ替えたという印象だろう。フレッシュな戦力が、島根をB1中堅から真のタイトルコンテンダーに引き上げることができるか注目だ。

続いて長崎ヴェルカと佐賀バルーナーズは基本的には昨季からの継続路線を歩んでいるが、長崎は川真田紘也を新戦力に迎え、新指揮官に長くニュージーランド・ブレイカーズ(ニュージーランドNBL)を率いたモーディ・マオールを招へい。契約満了となっていた馬場雄大とも再契約し、ハピネスアリーナでのファーストシーズンに挑む。佐賀は三遠から高精度の3Pシュートを武器とする金丸晃輔を迎え入れた。特に佐賀は昨季3Pシュート成功率でリーグ5位の34.4%を記録しており、金丸の加入はその精度をさらに高めることにつながりそうだ。

レイ・パークスジュニアやマット・ボンズを加えた大阪エヴェッサに、小野龍猛や古川孝敏と契約した京都ハンナリーズなど、西地区は総じて経験値の高いベテランを複数そろえるチームが増えた印象だ。これらのチームを相手に昨季B2王者に輝いた滋賀はチャレンジャー精神を持ってぶつかっていかなければならない。主力の多くが入れ替わったものの、長崎をB1昇格に導いた実績を持つ前田健慈朗HCの下、より強固なケミストリー構築をしながらの戦いになるだろう。

シーズンが終了するとき、どのクラブがチャンピオントロフィーを掲げているのか。今から楽しみでならない。


※1:りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24
※2:日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24


文=月刊バスケットボール編集部

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