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「後退は必ずしも悪いことではない」 B2優勝を手土産に滋賀レイクスが1部復帰を飾る

2024.05.21

見どころ・レポート

【(C) B.LEAGUE】

 日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24は、いよいよ大詰めのファイナルを迎えた。44勝16敗の西地区1位で、PLAYOFFSに入ってからは青森ワッツ、山形ワイヴァンズを破った滋賀レイクス。35勝25敗の東地区2位で、56勝を挙げたアルティーリ千葉を破る大番狂わせを演じた越谷アルファーズ。どちらもB1昇格という大きな目標を達成した上で、最高の形でシーズンを締めくくるべくこのFINALSに臨んだ。

 5月18日に行われた第1戦はオーバータイムの末に滋賀が96-87で勝利。点差が離れることなく両チームに流れが行ったり来たりする息詰まる展開となったが、79-79で迎えたオーバータイムに越谷がディフェンスの集中力を切らし、最も警戒すべきブロック・モータムをフリーにしたり、得点が取れなかった後に守備に戻るのが遅れたりと息切れし、最後の5分間は8-17と圧倒されて初戦を落とした。

 迎えた5月19日の第2戦、滋賀は前日の勢いをそのまま持ち込もうと、どの選手もティップオフからエネルギー全開で試合に入る。しかし、気持ちが先行しすぎて攻守にバランスが悪く、特にディフェンスではボールには激しく当たるものの、選手同士の距離感が悪くなって、越谷にパスでもドライブでも簡単にズレを作られてしまった。

 モータムが思い切り良くリムへと飛び込んで狙ったダンクを小寺 ハミルトンゲイリーが叩き落すブロックショットも越谷を勢い付けることに。良い守備から攻撃でも良いリズムへと繋ぐ越谷は、開始5分で松山駿が3本、星川堅信とジャスティン・ハーパーが1本ずつと5本放った3Pシュートをすべて決め、21-11と2桁のリードを奪った。

【(C) B.LEAGUE】

 少々出遅れた滋賀だが、気迫あふれるプレーが悪いわけではない。越谷に先行されても慌てることなく、気負いすぎていた精神面を落ち着かせると、周囲と噛み合うようになって反撃を開始する。前日に良かった時間帯のプレーを再現するかのように点差を詰め、野本大智のシュートで27-25と逆転して第1クォーターを終える。

 第2クォーターも滋賀の流れで試合は進み、越谷は3Pシュートに当たりが来なくなったことに加え、ハーパーが足を痛めてプレー続行不能になってしまう。これは越谷にとって大きなアクシデントだったが、松山がチームを鼓舞するかのような果敢なアタックからバスケット・カウントをもぎ取り、ハーパーがケガをしたことでプレータイムの伸びた井上宗一郎が3Pシュート連続成功と気を吐いたことで、崩れることなく滋賀に食らい付いていった。井上は前日の13分から26分へと出場時間が倍増し、3Pシュート7本中4本を沈めて存在感を見せている。

 しかし、越谷が粘り強いバスケを続けても、滋賀にはそれをしのぐ安定感があった。1ポゼッション差、2ポゼッション差で食らい付く越谷にプレッシャーを感じなかったはずはないが、相手にビッグプレーが出ても慌てることなく取り返し、わずかではあってもリードを守り続けた。

 71-66で迎えた第4クォーター残り8分半、ここを勝負どころを見極めたキーファー・ラベナがジャスティン・バーレルとのハンドオフから放った3Pシュートを沈め、続くポゼッションではドライブでゴール下まで攻め込み、アイザック・バッツを引き付けてバーレルのイージーダンクをアシストする。これで滋賀が78-70と越谷を突き放した。

 越谷はエースのLJ・ピークが徹底的なマークを受けて思うようにプレーさせてもらえず、特に3Pシュート成功なしと持ち味である爆発力を発揮できず。滋賀が丁寧にここを抑え続けたこともあるが、ハーパーのケガでオフェンスのバリエーションを欠き、厚みを出せなかった。それに加えて、滋賀には4691人を集めたホームコートアドバンテージがあった。第4クォーター、越谷の猛追に滋賀はファウルが先行し、6本のフリースローを与えたが、滋賀ブースターの大ブーイングに邪魔されてピークは2本中1本、バックは4本中1本しか決められず、ここで取り損ねた点数が勝敗に大きな影響を与えた。

【(C) B.LEAGUE】

 それでも82-89と7点差の残り48秒から、越谷はあきらめることなく攻勢に出て、松山がこの試合5本目の3Pシュートを決め、ピークが確実にインサイドで2点を奪って87-89の2点差へと迫る。

 滋賀はこういう場面で決してターンオーバーをしないラベナにボールを託すが、体力的に限界の来ていたラベナはここで足を攣ってしまい、痛恨のターンオーバーを犯す。越谷は残り時間のない中でピーク、松山と繋ぎ、最後はピークが決まれば逆転の3Pシュートを放つが、これがリングに嫌われて試合終了。ラベナはターンオーバーの後、足が攣っているにもかかわらずディフェンスへと走り、優勝が決まってもしばらくは起き上がることができなかった。それほど選手たちを消耗させる激闘を滋賀が89-87で制し、2023-24シーズンのB2チャンピオンとなった。

 滋賀のヘッドコーチ、ダビー・ゴメスは「昨シーズンに降格して、チームが後退したととらえられたと思いますが、後退は必ずしも悪いことではなく、滋賀レイクスという組織にとって初めての優勝を果たすことができました」と語る。

「優勝を勝ち取ってくれた選手たちに感謝を伝えたい。コーチ陣はサポートはできますが、勝ち取ってくれたのは選手たち。コーチのことを信頼して、ここまで戦ってくれたことに感謝しています」

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