「アルティーリ千葉はやっぱり強い」を印象付けた3位決定戦、ホームの大観衆の期待に応えて有終の美を飾る
【(C) B.LEAGUE】
日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24の3位決定戦に回ったのは、アルティーリ千葉と山形ワイヴァンズ。いずれもFINALS進出を逃した悔しさを抱えつつ、勝ってシーズンを終えるためにこの試合を迎えた。
5月18日の第1戦は4557人の観客が見守る中でホームのA千葉が92-72で勝利している。コートを広く使って3Pシュートを打ちたい山形に対し、外国籍選手まで含めて全員がきっちりを足を動かして相手のやりたいバスケをやらせず、攻めに転じればハーフコートオフェンスでじっくりと攻めの形を作って、エースのブランドン・アシュリーにボールを集めるだけでなく前田怜緒のドライブや杉本慶の3Pシュートなどバランスの良い攻めが機能した。第3クォーター途中に山形の反撃を浴びて3点差に詰め寄られ、アシュリーが審判への抗議でテクニカルファウルを取られる場面もあったが、ここで山形の望むオフェンス合戦に応じることなく、落ち着いてディフェンスとリバウンドを引き締めることで、相手のペースに乗ることなく完勝を収めた。
続く5月19日の第2戦にも、千葉ポートアリーナには5112人の観客が集まった。試合序盤、山形は速い攻めからの3Pシュートのこだわりすぎた前日の反省から、まずはインサイドを固めてじっくり守り、イージーシュートのチャンスを与えない守備重視へと戦い方を変えるが、これに対してA千葉は、大塚裕土、ブランドン・アシュリーの2本と3Pシュート攻勢で先手を取る。第1戦で16得点を挙げていた前田怜緒が開始早々のケガで下がるアクシデントもあったが、木田貴明や熊谷尚也がその穴を埋めてゲームプランを崩さなかった。
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シュートタッチ好調のA千葉は第1クォーターで30-19と2桁のリードを奪い、第2クォーターの立ち上がりもアシュリーの3Pシュート、デレク・パードンのファストブレイク、パードンがドライブでマイケル・フィンケをかわしてのゴール下と、多彩なオフェンスで効率良く得点を重ねていく。山形は試合開始当初のディフェンスの集中が続かなくなっており、早々にタイムアウトを取らざるを得なかった。
それでもA千葉の流れは途切れない。得点源のアシュリー、パードンだけでなく杉本、木田、黒川虎徹と日本人選手も攻める意欲を強く出してバランス良く得点を重ねる。またサイズの利を生かしたリバウンドでも優位に立ち、特に前半で8つのオフェンスリバウンドを奪ってセカンドチャンスに繋ぎ、第2クォーター終盤には身長226cmのチュアンシン・リュウが山形のビッグマン2人の上からリバウンドを取り、そのまま得点を奪うビッグプレーも飛び出した。セカンドチャンスを防ぐために山形はリバウンドへの意識を必要以上に強めることになり、それは山形の生命線である山形のトランジションの出足を鈍らせることになった。
41-56と15点ビハインドで後半を迎えた山形は、多少タフな状況でも積極的に3Pシュートを狙うようになり、後半最初のプレーで白戸大聖がクイックリリースの3Pシュートを決める。それでもA千葉は木田がすぐに2点を返し、アシュリーのミドルジャンパーにパードンのバスケット・カウントで主導権を明け渡さない。ターンオーバーを連発したり、3Pシュートを連続で許したりしなければ自分たちが優位を保てることをA千葉は理解しており、相手に良いプレーが出てもそれを単発に留めることで試合をコントロールし続けた。
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A千葉が唯一コントロールできなかった山形の攻め手は20歳のポイントガード、岡島和真だった。一瞬でトップスピードに乗る瞬発力を生かし、積極的に仕掛けてくる岡島のアタックへの対応が遅れ、3本連続でシュートを決められ、ホリフィールドと阿部龍星の連続3Pシュート成功をいずれもアシストされている。それでもA千葉には十分なリードがあった。第4クォーターのオフィシャルタイムアウト明け、杉本の3Pシュートに続き、アシュリーが岡島からスティールして速攻のダンクに持ち込んで、山形の反撃ムードを断ち切る。最後は大ベテランの岡田優介の3Pシュートで締めて、A千葉が97-79で勝利した。
B1昇格とB2優勝を逃しているだけに、勝ってもA千葉の選手たちに笑顔はなかったが、観客からはシーズンを通した健闘を称える拍手が送られた。ヘッドコーチのアンドレ・レマニスはこの2023-24シーズンを「ビタースイート」と表現。試合前には選手たちに「ファンの皆さん前で自分たちのバスケを表現し、アルティーリの良い印象を持って帰ってもらおう」と伝えたそうだ。その上で「16本のオフェンスリバウンド、23回のアシストに加え、3Pシュートにもしっかりコンテストして山形を79得点に抑えた。ディフェンスで全員がコミットし、ハードワークをして、最後まで全員で戦えた」と、シーズン最後の試合での選手たちのパフォーマンスを称えた。
キャプテンの大塚は「気持ちを切り替えることがまだ難しい中で、連勝で終えることができました。アルティーリ千葉はやっぱり強い、良いバスケットをするチームだと見ている人たちに思ってもらえるように、その言葉を胸に戦いました」と語る。B1昇格を逃した悔しさは晴れないが、それでも「シーズンを重ねるごとに熱量が増していくのを感じている」と彼が言う熱量を、新たなシーズンに繋げてもらいたい。