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EASLから見る韓国・フィリピン・中華圏のバスケットボール事情

2024.01.10

見どころ・レポート

【(c) East Asia Super League Limited. 】

インタビュー=井口基史(バスケットボールコメンテーター)

【大会基本情報】
■出場チーム、大会フォーマット
日本(B.LEAGUE):千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングス
韓国(KBL):安養正官庄レッドブースター、ソウルSKナイツ
フィリピン(PBA):TNTトロパンギガ、メラルコボルツ
中華圏(P.LEAGUE+):台北富邦ブレーブス、ニュータイペイキングス

日本、韓国、フィリピン、中華圏からそれぞれ2チームが参戦。出場する8チームが2つのグループに分かれ、2023年10月から2024年2月にかけてグループステージを行います。ホーム&アウェー形式で1回ずつ対戦し、各グループの上位2チームが3月8日から10日にかけて開催されるファイナルフォーに進み、優勝を争います。

■外国籍選手登録
外国籍選手のベンチ登録は各リーグによって異なりますが、EASLは外国籍選手が2名まで。帰化選手やアジア特別枠選手は1名まで登録できます。

国内リーグでコートに立てるのは、B.LEAGUE『外国籍選手2名+帰化選手orアジア特別枠選手1名まで』KBL『外国籍選手1名+アジア枠選手1名』、PBAは『外国籍選手1名』、P.LEAGUE+は『外国籍選手2名+留学生選手1名』。台湾にも日本のような留学生がいるため、彼らは別枠でプレーできることになります。

B.LEAGUEがEASLとよく似たルールだと言えますが、EASLはベンチを含めて外国籍選手が2名まで。両チームともに3名(※琉球ゴールデンキングスは4名。1名はインジュアリーリスト登録)の外国籍選手を擁しているので、EASLではその時の状況に応じて彼らを使い分けています。EASLを初めて見る方々には、各国リーグと違うレギュレーションで戦っていることを知ってもらいたいです。

B.LEAGUEの外国籍選手はEASLの戦いにおいても重要な役割を担う【(c) East Asia Super League Limited. 】

■試合時間、ファウル数
PBAとP.LEAGUE+はNBA同様、1クォーター12分の48分間。パーソナルファウルも6個まで可能です。その影響かどちらもスロースタートな印象で、勢いに乗ったら一気にひっくり返すようなチームが多いと感じています。この見方では、EASLと同じ1クォーター10分の40分間、パーソナルファウル5個のB.LEAGUEとKBLは試合の進め方が似ているかもしれませんが、韓国のほうが1ポゼッションへの追及が厳しい印象だと思います。

【EASLをもっと知ろう】
■リーグ・チーム情報
⚫︎韓国
KBLはプロリーグの歴史が長く、10チームで構成されたリーグです。国内の選ばれしエリート選手が入団してくる狭き門。ソウルSKナイツは「SKグループ」、安養正官庄レッドブースターズは高麗人参などを扱う健康食品の会社、ほかにもサムソン(ソウル三星サンダース)やヒュンダイ(蔚山現代モービスフィバス)など、財閥や大企業が深く関わり、どちらかいえば実業団気質も色濃く残っています。韓国には兵役制度があり、兵役期間を過ごすトップ選手だけで構成されているチームがあるなど、縦横のつながりも強く、代表強化に一役買っている一面もあります。ドラフト制度や外国籍選手のサラリーキャップのルール、プロレフェリーを多く採用するなど、プロリーグとして様々なトライ&エラーを繰り返し、成長してきたリーグです。ソウルSKナイツは2021年に千葉ジェッツとパートナーシップを締結したことでも知られています。また、シーホース三河の中村太地選手が日本人選手としては初めてKBLでプレーした経験を持ちます。

・見るべき選手
レンツ・アバンド(安養正官庄レッドブースター)選手はアジア枠でプレーするフィリピン代表選手。KBLで成功しているフィリピン人選手です。また、オ・ジェヒョン(ソウルSKナイツ)選手は2020-21シーズンのKBL新人王。いずれも今後の日本代表の戦いでも対戦する可能性の高い選手ですので、覚えておいたほうがいいでしょう。

ソウルSKナイツのオ・ジェヒョン【(c) East Asia Super League Limited. 】

⚫︎フィリピン
PBAはNBAに次いで世界2番目に古いプロバスケットボールリーグで、1975年に発足されました。フィリピンではPBAが主催する3つのリーグ戦があり、それぞれ「フィリピン・カップ」、「コミッショナーズ・カップ」、「ガバナーズ・カップ」と呼ばれています。バスケットボールは国技と言われ、バスケットボール選手の恋愛報道はトップニュースになるほどです。かつては左官マイク(東山高校―近畿大学―滋賀レイクスターズ)さんがチャレンジし、近年だと島根スサノオマジックの安藤誓哉選手がプレーした経験を持ちます。

・見るべき選手
横浜ビー・コルセアーズファンならご存知かもしれませんが、2018-19シーズンに在籍したプリンス・イベ(メラルコボルツ)選手。EASLではブロックを中心にインサイドで力を発揮しています。あとはクリス・バンケロ(メラルコボルツ)選手。NBAで活躍するパオロ・バンケロ(オーランド・マジック)選手の従兄弟で、ハンサムということもあってフィリピン国内では大人気な選手です。

メラルコボルツのプリンス・イベ【(c) East Asia Super League Limited. 】

⚫︎中華圏
中華圏とありますが、台湾のバスケットボール事情を中心に説明します。台湾はB.LEAGUE発足以前の日本のような現状で、「P.LEAGUE+(プラスリーグ)」、「T1リーグ」、「SBL」と3つのリーグが存在します。SBLがいわゆる実業団リーグ。完全プロ化を目指して発足したのがP.LEAGUE+。そして、プロ化についての意見やルールの違いから新たにT1リーグが生まれたという、近年は激動の台湾バスケットボール界です。P.LEAGUE+とT1リーグの交流戦はありませんので、どちらが強いとは断言できませんが、ドラフトを巡り新人選手を取り合ったり、既存選手の引き抜きが頻発する状況ですので、日本のNBL、bjリーグ並立時代について台湾バスケットボール関係者から問い合わせがあったりします。P.LEAGUE+はプロ野球とプロバスケットボールの2球団を所有する台北富邦ブレーブスが中心となって始まりました。

・見るべき選手
元シーホース三河のクリス・ジョンソン選手、元大阪エヴェッサのマイケル・シングルタリー(ともに台北富邦ブレーブス)選手は日本にも馴染みのあるプレーヤー。今大会の目玉とも言えるのがジェレミー・リン(ニュータイペイキングス)選手です。NBA初の台湾系アメリカ人で、“リンサニティ”といった言葉でNBA全体にも影響を与えた偉大な選手です。弟のジョセフ・リン選手もニュータイペイキングスでプレーしているので、EASLの舞台で2人はぜひ見るべきでしょう。

千葉ジェッツは5勝0敗でグループAの1位、琉球ゴールデンキングスは2勝2敗でグループBの2位につけています。優勝すれば、その賞金はなんと100万ドル(約1億4,300万円)! B.LEAGUEとの過密日程をこなしていますが、EASLでの戦いからも目を離せません。両チームの次戦は1月10日。千葉ジェッツはホームで安養正官庄レッドブースター、琉球ゴールデンキングスは敵地でニュータイペイキングスと対戦します。

【(c) East Asia Super League Limited. 】

井口基史(バスケットボールコメンテーター)|プロフィール
バスケットボールコメンテーター。鹿児島南高-愛知学泉大-カリフォルニア州立大ベーカーズフィールド校-ベーカーズフィールドカレッジ出身。 帰国後FIBA国際代理人資格をアジア初受験取得。プロリーグ発足まもなく資格返納しチームスタッフへ。 富山-滋賀-岩手-大阪でスカウト・通訳・GM・クラブ代表を経験。現在は日本代表/Bリーグ/ユースなどで解説を務める。

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