河村勇輝のウインターカップ「緊張、プレッシャー…重圧は大きかったです」
今や日本を代表する選手となった河村。ウインターカップでは2年、3年時に連続優勝を果たした【月刊バスケットボール】
12/23から始まったウインターカップ。Bリーグで活躍する選手たちの多くがウインターカップで活躍した。そこで、12月20日~29日まで、連載「Bリーグ選手のウインターカップ」を連日公開。第8回は河村勇輝選手(福岡第一高校/現:横浜ビー・コルセアーズ)を特集。
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昨季のBリーグでMVPや新人賞など個人6冠を達成、今夏のワールドカップでも男子日本代表の主軸として世界を驚かすビッグプレーを連発した河村勇輝(横浜BC)。今季もBリーグでは得点ランキングのトップをひた走るなど、今やその実力を疑う者はいないだろう。そんな稀代のポイントガードが、福岡第一高校時代に初めて日本一に立ったのが高校2年生で出場した2018年のウインターカップ。この年の福岡第一は、U18日本代表活動で河村と松崎裕樹(横浜BC)を欠いたこともありインターハイは初戦敗退だったが、冬の頂点に立って汚名を返上した。
振り返れば、圧巻の強さでの優勝だった。初戦から決勝まで、東山、飛龍、東海大付諏訪、桜丘、中部大第一と、様々なタイプの強豪たちがあの手この手を使って挑んできた。それでも、その全てに完璧にアジャストし、全試合で20点以上の差を付けての快勝。「相手に応じてケース・バイ・ケースで対応していく」(井手口孝コーチ)ディフェンスで流れをつかみ、勝負どころを嗅ぎ分けて一気にたたみかけるのだ。特に、河村と小川麻斗(千葉J)の2年生ガードが起点となる研ぎ澄まされた速攻には、「分かっていても止められない」と対戦相手のコーチたちも舌を巻いた。
決勝後のインタビュー、井手口コーチは「11月3日の福岡県ウインターカップ予選(79-71)。あれ以上の点差で勝つことが僕らの使命だと思っていました」と、この舞台に来られなかった同県のライバル・福岡大附大濠をねぎらった。同年の大濠も全国上位と遜色ない高い実力を持ったチームで、1年間、地区予選から高いレベルで切磋琢磨してきたことが全国で強さを発揮することにもつながったのだ。
“コート上の監督”のようにリーダーシップを発揮 【月刊バスケットボール】
翌2019年は、河村と小川、大黒柱のクベマジョセフ・スティーブ(専修大)という前年からの主軸が3人残り、そこに内尾聡理(中央大)、神田壮一郎(拓殖大)を加えた不動のスターティング5を形成。全員3年生の布陣は抜群の安定感を誇り、苦しい時間帯でも自分たちで立て直すことができる完成度の高いチームだった。中でも、“コート上の監督”のようにリーダーシップを発揮したのが河村だ。井手口コーチも「試合を任せられる」と語り、3年間で大きく成長した司令塔に絶大な信頼を置いていた。
夏のインターハイで優勝し、創部初の連覇に向けて臨んだウインターカップは、ロスター15人中13人が3年生。河村がチームの強みを「一人ひとり、しっかり役割分担ができていること」と語ったとおり、試合に出る選手もベンチメンバーも、それぞれにやるべきことを全うした。どのチームからもマークされる存在だったが、初戦から準決勝まで失点を全て59点以下に抑える堅いディフェンスを披露し、決勝へと進出。相手は福岡大附大濠で、1971年の第1回大会以来、実に48年ぶりとなる同県対決での決勝となった。
エースの河村はこの決勝戦、ショットこそ不調だったものの、相手の度肝を抜くような鮮やかなパスをさばいて味方をリード。流れをつかんでじわじわと点差を広げたのは福岡第一で、後半から福岡大附大濠の追い上げに遭ったものの、スティーブら主力の選手が勝負どころで活躍した。最終スコアは75-68。因縁の対決を制し、連覇の偉業を成し遂げた。
高校最後の大会で有終の美を飾った河村は現在、Bリーグでプレーする【(C) B.LEAGUE】
高校最後の大会で有終の美を飾った河村。試合後、「緊張というかプレッシャーというか……そういう重圧は大きかったです」と胸の内を明かしたが、のしかかった重圧を払拭したのは「この1年間、どこのチームよりも練習を頑張って、みんなでバスケットに向き合ってきた」という確固たる自信だった。敵将・片峯聡太コーチでさえ「河村選手のすごさは周りへの影響力。日頃の見えないところからチームに良い影響を与える」と感服するように、自主練習でも一切手を抜かない河村から良い影響を受け、周りの選手たちもひたむきに努力。持ち味の“堅守速攻”を磨き上げ、一朝一夕では築かれない揺るぎない強さを身に付けた。井手口コーチは優勝後のインタビュー、「日本のどこの高校生よりも一生懸命に頑張った3年生ですから、『本当によく頑張った、ありがとう』と伝えたいです」と最高の言葉でほめたたえた。
文=月刊バスケットボール編集部