篠山竜青&多嶋朝飛、悲願のWC優勝を前に洛南が立ちはだかる
篠山は将来のJBL入りを見据えて北陸入りを決断【月刊バスケットボール】
12/23から始まったウインターカップ。Bリーグで活躍する選手たちの多くがウインターカップで活躍した。そこで、12月20日~29日まで、連載「Bリーグ選手のウインターカップ」を連日公開。第6回は篠山竜青選手(北陸高校/現:川崎ブレイブサンダース)、多嶋朝飛選手(北陸高校/現:大阪エヴェッサ)を特集。
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ウインターカップ2023で45年連続46回目の出場を果たした福井・北陸高。そのバスケスタイルはご存じ「ラン&ガン」だ。司令塔が要となる戦術ということもあってか、その歴史の中では佐古賢一(元いすゞ自動車/現三河シニアプロデューサー)を筆頭に、五十嵐圭(群馬)、石崎巧(元琉球)、西村文男(千葉J)といった名ガードを輩出してきている。今回の話の主役もその歴史に名を刻んだ2人、篠山竜青(川崎)と多嶋朝飛(大阪)である。
神奈川出身の篠山は小学3年生でミニバスを開始。厳しい練習をこなすと旭中時代にはジュニアオールスター県代表に選ばれた。全国の同年代と戦った中で篠山は「全国でも自分の力が通用するのではないかと考え、同時に将来はJBL(日本リーグ、2007~13年まで開催)でプレーしたい」と思ったという。8チームしかなかったJBLに入るためにはどうすべきか? 1部リーグの大学で主力として活躍することが一番の近道となり、そのためには全国ベスト4、8といった強豪校に進学してスターターとして活躍する必要があると考えると、久井茂稔コーチの誘いもあって北陸入りという決断をする。
多嶋は北海道出身ながら、教師間のつながりから北陸へ入学する【月刊バスケットボール】
一方、北海道出身の多嶋は両親がクラブチームプレーヤーでこちらも幼少時からバスケに親しんでいた。同じく小学3年生でミニバスに入ると正に虜に。大空中ではジュニアオールスター道代表に選ばれている。当初、道内の高校を考えていたという多嶋だったが、教師間のつながりで噂を聞きつけた久井コーチから声をかけられたことをきっかけに北陸進学を決める。
当時の北陸は5対5の練習を重視して行っていた。「試合を想定した練習の中でどうアピールしていくかが重要でした。部員数がとても多かった(約50人)ので毎日がアピールの場でした」と篠山。そのアピールが叶って高1からベンチ入りし、高2ではスタメンの座も勝ち取っている。一方の多嶋は「2年生まではほとんど試合に出られなかった」。両者がコート上で活躍するのは3年生になってからとなる。
3年生になると篠山がU18日本代表に選出される。その不在の間に学校に残った選手たちを変える出来事が起こっていた。光泉(現光泉カトリック)に完敗し、危機感を覚えた選手たちは生活面から自らを戒め、全神経を集中させて練習。結果的に多嶋や井手勇次(元金沢、奈良)らがさらに成長を果たして、チーム力がアップしたのだ。そうして大阪インターハイに臨み、順調に勝ち進むと決勝では辻直人(群馬)や比江島慎(宇都宮)がいた洛南を98-91で下して日本一となる。余談となるが、この決勝で7スティールという活躍を見せた多嶋は『月刊バスケットボール』の表紙に。後に篠山が「優勝したけど表紙を朝飛に取られたのが心残り」とボヤいている。
現在はBリーグの舞台で切磋琢磨する篠山(写真左)と多嶋【(C) B.LEAGUE 】
インターハイ王者となった北陸は、ウインターカップ2006で第1シードに。初戦となる2回戦で善通寺第一(香川)を74-62で倒すと、3回戦の東和大附昌平(埼玉/現昌平)戦ではペースを握らせることなく98-63で快勝。準々決勝の明成(宮城/現仙台大附明成)戦は、持ち前の執拗なディフェンス、アップテンポなオフェンスが奏功して95-61で勝ち上がった。
準決勝の八王子(東京/現八王子学園八王子)戦は、篠山が「会場を盛り上げることができ、同時に僕たち自身もすごく試合を楽しむことができた」と語る印象深い試合となる。セネガル人留学生、モード・ニャーンにボールを入れさせない策を取った北陸は1Qで19点差を付ける好スタート。前半をリードして終える。しかし3Q、八王子が巻き返して逆転を許してしまう。勝負の4Qでも八王子がペースを握って残り4分で8点差に。しかし「焦りはなかった」という篠山と多嶋がここからスティールを2本ずつマーク。そして多嶋、井手の連続3Pで差を詰めると79-79で迎えた残り29秒、井手が3Pを射抜いて劇的勝利を決めた。
北陸は7度目のウインターカップ決勝に駒を進める。それまで冬の優勝はなく悲願となるタイトルだったが、夏に日本一を争った相手が立ちはだかることになる。エース・湊谷安玲久司朱(元横浜BC/現BEEFMAN.EXE)を中心とした洛南に対して、北陸はペースを握ることができずに惜敗。悔しい敗戦のあとだったが、篠山は「相手のゲーム運びがうまくて、自分たちのプレーを何もやらせてもらえなかった。あそこまでやられたら逆にすっきりしています」と相手を称賛。多嶋も「相手が全然ミスをしないのでペースが来なかったし、それでこっちが無理なシュートを打ってペースを崩したみたいな感じだったのでしようがない」と完敗を認めている。そのコメントは両者の人となりを伺い知れるものだろう。
果たして篠山、多嶋が目指した悲願は後輩たちに託すことになった。今年の大会は惜しくも初戦敗退となったものの、2人の同級生であり当時キャプテンだった八木昌幸氏は今アシスタントコーチとなり、久井コーチと共に頂点を目指している。
文=月刊バスケットボール編集部