『スタッツで見るBリーグ』好調を維持するB1上位チームを4Factors分析!
名古屋Dはジョシュア・スミスの活躍もあり、高いORB率を誇る【(C) B.LEAGUE】
文=しんたろう
Bリーグ23-24シーズンが開幕し、B1は早くも14試合(約1/4)を消化。今回は、好調なスタートダッシュを切った8チームをピックアップし、4つの重要なスタッツをもとにNBAで初めて統計学者として雇われたスタッツの父・ディーンオリバー氏が提唱した「4Factors」を用いて強さの秘密を分析していこう。
・対象チーム
※執筆時点(11/20)の各地区上位2チーム+勝率上位2チーム
東地区1位:アルバルク東京(13勝1敗)
東地区2位:宇都宮ブレックス(11勝3敗)
中地区1位:川崎ブレイブサンダース(12勝2敗)
中地区2位:三遠ネオフェニックス(12勝2敗)
西地区1位:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(11勝3敗)
西地区2位:琉球ゴールデンキングス(11勝3敗)
勝率7位:大阪エヴェッサ(9勝5敗)
勝率8位:長崎ヴェルカ(9勝5敗)
・4Factorsとは?
先述した統計学者のディーンオリバー氏が提唱した、オフェンススタッツに関する4つの指標の総称。
・EFG%(実質シュート決定率)
・TOV%(ターンオーバー率)
・OR%(オフェンスリバウンド獲得率)
・FTR(フリースロー獲得率)
4つの指標について、それぞれ解説する。
・EFG%(実質シュート決定率)
勝利のために最も重要と言われているスタッツ。
Bリーグ公式用語集によると、
3Pシュートに比重(1.5倍)をかけて補正したフィルドゴール成功率。
計算式はフィールドゴール+(0.5×3Pシュート成功数)/フィールドゴール試投数となっている。
なぜ一般的なFG%(フィールドゴールパーセンテージ)ではないのかを説明しよう。
FG%は(シュート成功数÷シュート試投数)×100で求めるため、
例えば、選手Aと選手Bがそれぞれ10本のシュートを放った試合において、選手AのFG%が50%、選手BのFG%が40%だった場合、一見すると選手Aのほうが効率よく見えるだろう。
実際には、選手Aは2ポイントシュートを10本放ち、5本決めて10得点。選手Bは2ポイントシュートを4本放ちそのうち2本を決め、3ポイントシュートを6本放ちそのうち2本を決め、合わせて10得点を獲得していたとする。3ポイントシュートのほうが難易度が高く、決定率が下がるため、3ポイントシュートを多く打つ選手は効率が悪く見えてしまうが実質の得点は変わりないため、選手AとBの効率は同じということになる。これを改善するために3ポイントシュート成功に付加価値をつけて計算し直した数値がEFG%である。
・TOV%(ターンオーバー率)
シュートを打てずに攻撃が終わってしまうことは最も避けたい結果である。ターンオーバーの割合が高くなってしまうとシュートが打てずに相手に攻撃権を渡してしまうことになるため、TOV%は勝敗に大きく関わるスタッツである。計算式は、ターンオーバー数/自チームの攻撃回数で求められる。
・ORB%(オフェンスリバウンド獲得率)
バスケットボールという競技において、シュートを打った本数が勝敗に直結することがある。シュート本数を増やすプレイの一つがオフェンスリバウンドである。ORB%の数値は、自チームの全オフェンスリバウンドシチュエーションにおける実際の獲得本数で計測することができる。計算式は、ORB / (ORB + 対戦相手のDRB(ディフェンスリバウンド数))で求められる。
・FTR(フリースロー獲得率)
得点する確率が最も高いフリースローも、4つの指標に含まれる。
決定率ではなく、「フリースローを獲得したこと」を評価している点は興味深く、相手のファウルトラブルなど付加的な要因も考えられている。計算式は、FTA(フリースロー試投数)/FGA(フィールドゴール試投数)で求めることができる。
ちなみに、先述のオリバー氏によると勝利に関わる重要度は下記のように示されている。
(Ptsが高いスタッツの方が勝利に重要)
EFG%が相手より高い場合:10Pts
TOV%が相手より低い場合:5~6Pts
OR%が相手より高い場合:4~5pts
FTRが相手より高い場合:2~3pts
例えば、相手チームにEFG%を上回られてしまい10Ptsを取られてしまっても、 残りのスタッツ(TOV%、OR%、FTR)が相手よりもポジティブな結果であれば勝利することができる。
前置きがかなり長くなってしまったが、ここからは実際に4Factorsを見ていこう。
EFG%ランキング
リーグ順位 | チーム | EFG% |
1位 | 長崎 | 55.21% |
3位 | 名古屋D | 54.00% |
4位 | 琉球 | 53.30% |
4位 | 大阪 | 53.30% |
6位 | A東京 | 52.90% |
6位 | 川崎 | 52.90% |
10位 | 宇都宮 | 50.80% |
12位 | 三遠 | 50.62% |
リーグ平均 | 50.62% |
【(C) B.LEAGUE】
TOP8に6チームがランクイン。最も勝敗に関係すると言われているEFG%が平均値に近い数値であるにも関わらず、12勝している三遠はオリバー氏の重要度に則ると、残りのスタッツ(TOV%、OR%、FTR)が高いことがわかる。
TOV%ランキング
リーグ順位 | チーム | TOV% |
1位 | 三遠 | 13.5% |
5位 | 琉球 | 14.8% |
8位 | A東京 | 16.1% |
11位 | 川崎 | 16.7% |
12位 | 大阪 | 17.2% |
13位 | 宇都宮 | 17.4% |
16位 | 長崎 | 17.9% |
24位 | 名古屋D | 21.8% |
リーグ平均 | 17.25% |
※ネガティブなスタッツであるため、数値が小さいチームが上位となっている【(C) B.LEAGUE】
TOP8に3チームしかランクインしていないことも驚きだが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズがまさかのリーグ最下位。 5回攻撃したとすると1回以上はターンオーバーを喫してしまっている計算となっている。
ORB%ランキング
リーグ順位 | チーム | ORB% |
1位 | 名古屋D | 41.12% |
2位 | A東京 | 34.60% |
3位 | 琉球 | 34.26% |
5位 | 宇都宮 | 32.80% |
6位 | 三遠 | 32.29% |
15位 | 大阪 | 29.21% |
18位 | 川崎 | 26.61% |
21位 | 長崎 | 26.22% |
リーグ平均 | 30.04% |
【(C) B.LEAGUE】
TOP8に5チーム、下位に3チームとはっきり分かれた結果となった。
平均を10%以上も上回り、圧倒的なスタッツを記録している名古屋Dは要注目。
名古屋Dは決定率が高いため、オフェンスリバウンド機会が他のチームよりも少なく、ジョシュア・スミス(オフェンスリバウンド数リーグ3位)の活躍により高いORB%を記録している。
18位の川崎は例年このスタッツが低い傾向にあるため、作戦通りの順位と言える。
FTRランキング
リーグ順位 | チーム | FTR |
2位 | 大阪 | 32.33% |
4位 | A東京 | 29.13% |
5位 | 三遠 | 29.06% |
7位 | 名古屋D | 27.82% |
9位 | 川崎 | 27.20% |
11位 | 長崎 | 26.24% |
18位 | 琉球 | 24.73% |
19位 | 宇都宮 | 23.90% |
リーグ平均 | 26.30% |
【(C) B.LEAGUE】
TOP8に4チームランクイン。主に2ポイントを主体とするチームが多く獲得している(Bリーグ公式サイト:%FGA2PT項参照)。
オフェンスリバウンド獲得率が高い(ペイントエリアでボールを保持する機会が多い)琉球は、総得点のうちペイント内での得点が占める割合が高い(フリースロー機会が少ない)ため、18位という順位になっている(Bリーグ公式サイト: %PTSPITP項参照)。
ここまでランキングを見てきたが、TOV%がリーグで最多であった名古屋Dは、リーグ2位のEFG%と驚異的なオフェンスリバウンド獲得率で挽回。EFG%が低めの三遠はそれ以外のスタッツ全てがTOP8にランクインしており、総合力の高さで勝率をキープしている。TOP8にランクインしているスタッツがORB獲得率のみである宇都宮は、ディフェンスによって高い勝率を維持している(Bリーグ公式サイト: OPPPTS項参照)など、上位チームにおいても特色が現れている結果になった。
4Factorsは比較的簡単な計算式で求められるスタッツなので、読者の皆様にも是非試してもらいたい。
三遠は総合力の高い数値を残している【(C) B.LEAGUE】