2025/01/31B.HOPE STORY#049

サンロッカーズ渋谷・神田康範社長が語る『S-Ring』地域還元への想い

昨年9月、サンロッカーズ渋谷は社会貢献プロジェクト「S-Ring」を立ち上げました。その設立に尽力したのが神田康範社長です。社長就任から、わずか3ヵ月で新たな枠組みを作り上げた背景には、“地域に還元しなければならない”という強い思いがありました。「試合でいいプレーをして勝利することは大切です。しかし、地域に対して還元をするというのもプロの仕事です。」サッカーや野球でのクラブ経営を行ってきた神田社長は言い切ります。いかに地域還元の“質”を高めるのか、新たな枠組みは少しずつそれを現実化していこうとしています。今回は、神田社長に「スポーツのクラブだからできること」への想いを伺いました

©SUNROCKERS

――昨年6月、社長にご就任なさって3ヵ月というスピード感で、社会貢献プロジェクト「S-Ring」を立ち上げられました。『バスケットボールを通じて「みんなで、社会を一つの輪に。」がコンセプト』と説明されていますが、設立の経緯や背景を教えてください。

神田)クラブ経営という観点では、私はまずサッカーをやり、その後にバスケットボール、野球を経て、再びバスケットボールに戻ってきました。共通して言えるのが、ただ競技をやっているだけではダメということ。我々はファンの皆様、地域の方々に支えられて活動できているわけです。ヨーロッパでサッカークラブを経営した際には、地域への活動を十分に実施できなかったという反省もあり、野球チームを経営した際には、当時の試合数78よりも多い100回の地域貢献活動を実施することを目標に掲げ、取り組みました。地域に密着した活動を行う効果は非常に大きく、サンロッカーズ渋谷ならば東京というホームタウンに恩返しすることが必要と考えていました。
リズムダンス教室やバスケ教室、地域のイベントに参加したりなど、元々年間50回程度の活動を行っていましたが、どうしても受け身になりがちなのです。もっと能動的に取り組める仕組みを作りたい、ということで「S-Ring」を立ち上げることになりました。

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――根底にはヨーロッパでの経験があったわけですね。

神田)そうですね。ヨーロッパのクラブは、会員が会費を支払って運営に参加する“ソシオ制度(*)”が一般的で、社会貢献活動の意識はとても強く持っています。そういったところで、十分に活動をやりきれなかったという後悔がありました。
(*)ソシオ制度とは、クラブ会員によってクラブの経営を支える運営方法。

――設立したことでの変化や効果は感じますか?

神田)何よりも地道に続けること、そこに能動的に取り組むことが大切とは考えています。その中で 企業側から一緒に活動をしたいというお話をいただいて、実現したというのは一つの効果と言えます。単純に広告を出すといったことではなく、地域の子どもたちに還元をしたい、何かを残したいということで一緒にやる。新たな枠組みになったからこそだと感じます。

――企業としては、方向性が明確になったことで協力しやすくなったということですね。

神田)そうですね。その一例として、パートナー企業になっていただいた株式会社ジャイロアーキテクツ様との活動もスタートしました。渋谷区の全小学校(18校)にバスケットボール108球を寄贈し、子どもに夢の大切さを感じてもらうこと、また体力作りやチームワークの重要性を感じてもらう活動を実施しました。ジャイロアーキテクツ様は、東京に本社があり、単に広告を出すということではなく東京という地域に貢献したいということで、我々の想いとつながってタッグを組むことになったわけです。実際に成果として形になって、ジャイロアーキテクツ様にも大変喜んでいただけていると感じています。

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――「S-Ring」を紹介する際には『世界基準のクラブへ成長する、「Global Top 30」というビジョンを達成するためにも不可欠』というメッセージを発信しました。「Global Top 30」というところにどう結びつけていくのでしょうか。

神田)クラブには「バスケットボールを通じてすべての人々に夢や希望を与え、地域やコミュニティへ新たな価値を創出する」という経営理念があります。最終的にはNBAに次ぐようなクラブになること。そのために必要な要素がいくつもありますが、不可欠なものの一つがCSR活動のような地域への恩返しです。NBAでも「NBA Cares」という名称で積極的な活動をしていますね。こういった活動はクラブのベース(根底)にあるべきだと考えていることもあっての説明でした。

――「S-Ring」は活動目標、具体的なアクションとして①「スポーツと触れ合う健康的な社会の実現」、②「スポーツ教育と環境向上への取り組み」、③「みんなが元気で、笑顔になれるまちづくり」を掲げています。

神田)いずれも大切なものですが、スポーツのクラブだからできる子どもたちへのアクションは非常に大切だと考えています。例えば、夢を持つことができれば目標に対して頑張りやすくなります。加えて病気の子どもたちや社会的に恵まれない環境の子どもたちを励ますこともできる。これは一般企業ではなしえないことです。スポーツのクラブだからできること、それこそが基本方針にあります。

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中野区立第七中学校での講演会の様子(左)

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東京慈恵会医科大学附属病院 母子医療センターへクリスマスプレゼントを寄贈した時の様子(右)

――活動初年度について、目標は立てているでしょうか?

神田)回数としては、これまでが年間50回程度でしたので、それを超えるという意識もあることは事実ですが、大切なことは「数よりも質」ということです。スポーツのクラブだからできることを最大限しっかりやっていきたいですね。

――活動の対象地域である東京都は全国1位の人口です。その分、さまざまな問題も抱えていると思いますが、活動するうえでの難しさはありませんか?

神田)冒頭でもお話しましたが、私はこれまで福岡やオーストリア、熊本などさまざまな地域でクラブ経営を行ってきました。サンロッカーズ渋谷は東京ということで、どんな違いがあるのかとも考えていました。が、社長に就任して半年の中で感じているのは、東京都でも地方でも人間の根底の部分は変わらないということです。つまり、特別にこれが必要といったことはないのです。

――選手の皆さんの熱意はどのように感じていますか?

神田)そこに関してはもっと意識づけが必要と感じています。もちろん、試合でいいプレーをして勝利することは大切です。しかし、地域に対して還元をするというのもプロの仕事です。そういった意識をもっともっと高めていきたいですね。

――選手の皆さんには、それだけの魅力、影響力があるということですね。

神田)おっしゃるとおりです。例えば、子どもたちがジョシュ・ホーキンソン選手から「勉強を頑張ろうよ」「ご飯をしっかり食べれば大きくなるよ」と直接声をかけられたら、私なんかが言うより100倍影響力がありますよね(笑) それだけスポーツ選手の言葉というのは力があるものなのです。過去の話になりますが、クラブ経営をする前に私は本田圭佑さんのマネジャーをしていた時期がありました。その際、本田さんが子どもたちに夢や努力の大切さを説く夢授業を行う機会があったのですが、興味深いのはそれを聞く大人ですら、涙を流したのです。それくらい感動させる内容でしたが、努力を続けているスポーツ選手だからこそ、影響力があるのだと考えています。

――1月11日、12日のホームゲームで「S-Ring Weekend」を開催されますね。どんなことをやるのでしょうか。

神田)「S-Ring Weekend」ではSDGsに関連する様々なブースを多数ご用意します。フードドライブ実施、SDGsのパネルを使用した的当てゲーム、発電体験、募金ブースなど。来場された方にとって楽しんでもらうことはもちろん、改めてSDGsとは具体的にどんなことなのか、日々の生活でどんな工夫ができるのかを考えるきっかけにしていただきたいと思っています。「スポーツ」というコンテンツ力を生かして、より良い社会を目指した活動を今後も続けていきたいですね。

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S-Ring Weekendで実施したフードドライブの様子(左)

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PETキャップチャレンジの様子(右)

――最後に「S-Ring」の今後について、どのようなステップを踏んでいきたいかを教えてください。

神田)繰り返しになりますが、どのように質を高めるかを追求したいと考えています。バスケットボールを通じて子どもたちに夢を持つことの大切さを伝えることや、社会的に恵まれない方々をサポートすること、そういった内容を特に充実させたいと思います。その根底として、スポーツクラブだからできることでしっかり恩返しをすること。それを継続していきたいですね。

「S-Ring 」については以下をご参照ください。
https://www.sunrockers.jp/lp/s-ring/
「S-Ring Weekend」については以下を参照ください。
https://www.sunrockers.jp/news/detail/id=18450