「より良い未来へ」
~アルバルク東京が広げる活動と想い~
日本の首都・東京をチーム名に冠して活動するアルバルク東京は近年、気候変動の分野に力を入れて取り組んでいます。ファン参加型活動や、選手が地域の小学校で共にSDGs活動を行う等、クラブ・ファン・パートナー企業・地域が一体となり、CO2排出量削減を目指す活動を展開しています。
本インタビューでは、今年1月にクラブで開催した「CARBON NEUTRAL ACTION」の一環で小学校へ訪問した藤永佳昭選手、平岩玄選手と、社会的責任活動「ALVARK Will」の立ち上げに関わったクラブスタッフの浅野英朗さん、髙島里美さんにお話を伺いました。
※本記事は前編となります。後編は4月公開予定です。
藤永佳昭選手
平岩玄選手
ALVARK Willの立ち上げに関わったクラブスタッフの浅野英朗さん
ALVARK Will立ち上げに関わったクラブスタッフの髙島里美さん
『アルバルクはバスケ以外でも活躍している』と言われるクラブを目指して
ーー2021年設⽴の社会的責任活動「ALVARK Will」を立ち上げた背景を教えてください。
浅野さん「クラブとしてこれまでも色々な地域との活動はしていましたが、B.LEAGUE 2026-27シーズンから始まるB.LEAGUEの将来構想、新B1(仮)の参入に向けて新しいアリーナ建設の動きがある中、(SDGsといった)世の中の動きも考慮して取り組んでいく必要があると考えていました。クラブの中で統一的な活動目標を決めて、新しいアリーナにも繋げていきたいという思いで始めたのが一番大きなところです。」
ALVARK Will はアルバルク東京がファンや地域の皆さまへの感謝の気持ちとして実施する社会的責任プロジェクト
ーー活動を推進する上で⼤事にしていることはありますか。
髙島さん「世間でSDGsが浸透してきたのをきっかけに、地域に溶け込むための地域貢献活動にとどまらず、アルバルクも(クラブが果たすべき責任として)社会的責任活動にシフトしていこうというのがありました。私達は家を建てるなどの生活必需品を提供する会社ではないけれど、例えば大雨で人の命が危険にさらされるという現実がショックですし、『スポーツチームとして出来ることはある』という考え方が大事だと思います。『アルバルクって、バスケ以外でも活躍しているよね』と色んな方々に認識していただけるようになるところを目指しています。」
浅野さん「フロントだけが突っ走るのではなく、チームや選手も含めていかにクラブ一丸となってやれるかということも大事にしています。」
2022年8月にはトップチームの選手・スタッフがSDGs研修に参加。
SDGsへの理解をより深め、プロバスケットボールクラブとして自分たちに何ができるかを考えることを目的に開催。
ーー今年1月に開催した「CARBON NEUTRAL ACTION」について教えてください。
浅野さん「オフィシャルパートナーのトヨタ様とホームゲームの場を活用して、環境問題への認知を広げるイベントをしたいということから始まりました。単発ではなくて、帯で出来る月間を作りたいとなり、1月の5試合で『CARBON NEUTRAL ACTION』を実施していくことになりました。 選手たちも賛同してくれて、藤永選手と平岩選手が小学校に訪問し、子どもたちとSDGsの取り組み(アップサイクル活動)や、選手自身が行っている環境保全を意識したアクションをTikTokを通して伝える活動に繋がりました。」
今後も随時、選手の動画がアップ予定とのこと
アルバルク東京の選手たちも積極的に参加した「CARBON NEUTRAL ACTION」
ーーそれでは、藤永選手と平岩選手が参加したアップサイクル活動について教えてください。
平岩選手「アップサイクル活動とは本来捨てられてしまうものに、アイディアや新しい付加価値を足して、全く別のものにする取り組みのことです。」
藤永選手「今回は渋谷区の神南小学校に行き、小学生たちと一緒に使わなくなったTシャツからエコバッグを作りました。」
平岩選手「藤永選手と分担して各クラス1人ずつ担当して、小学生にレクチャーしながら作りました。」
ーー小学生と一緒に取り組んでいて印象に残っているシーンはありますか。
藤永選手「みんな積極的に取り組んでいて、すごいなと思いました。僕が小学生だったら...と考えてしまうくらいです(笑)。SDGsに関する授業も行っていて、僕たちより詳しいのではないかというくらい、環境について考えていることに感心しましたし、『僕たちも環境についてもっと考えなきゃいけないな』と思いました。」
平岩選手「全員が一概に同じ形のTシャツを持ってきているわけではないので、事前に用意された型紙に合わないTシャツを持っていた生徒がいたのですが、先生や僕たちに聞かずに自分で臨機応変に形を変えてバックを作っているのが驚きでした。」
浅野さん「実際に校長先生や担任の先生からも、『授業だけでなく今回のように選手と身体を動かしながら取り組むことで子どもたちにとってもより自分事化され、とても良い機会を持つことができた』と感想をいただきました。」
ーー「CARBON NEUTRAL ACTION」では、選⼿のCO2排出量計測も行いました。参加した選手たちの様子はいかがでしたか。
髙島さん「今シーズン、クラブとして『アルバルクのホームゲームで排出するCO2を全てオフセットします』というカーボンオフセットを掲げていますが、『なんか環境に良いことやっているんだね』で終わってしまうのではなく、ファンの方々にももっと自分事として捉えていただくことは出来ないかと考えていました。その中で、自分が年間どのぐらいCO2を排出しているかが可視化される”ライフスタイルカリキュレーター”というものがあると教えていただき、実際に4名の選手に計測してもらいました。
選手たちも普段は『カッコいい車に乗りたい!』とか『ブンブンふかすような車が好き!』と話していましたが、『この車に乗るとこれだけCO2が出るんだ』とか『車のサイズを変えるだけもCO2削減出来るんだ』というのを学んでいて、興味を持って取り組んでいましたね。」
※選手が計測したCO2排出量については特設サイトをご覧ください https://www.alvark-tokyo.jp/carbonneutralaction/
選手自身のCO2排出量に対して、それぞれコメントが掲載されている
ーー藤永選手と平岩選手が⽇頃から意識して行っていることはありますか。
藤永選手「クラブのオフィシャルパートナーのアディダス様から服やシューズを提供していただく際には、再生利用が可能な素材を使用したシューズや服を身に着けるようにしています。あとはコンビニに行ったらビニール袋をもらわないようにするなど、皆がやっているようなことも積み重ねています。」
平岩選手「僕は、都内の移動は車ではなくて電車を使うようにしています。鉄道が好きというのもありますが、車だと時間もかかりますし、ガソリンも使いますし。あとは自炊する時に廃棄が出ないように考えて食材を購入していますね。」
ーークラブや所属選手は様々な活動をされていますが、藤永選手と平岩選手から見て印象に残っている活動はありますか。
藤永選手「ピンクリボン運動(※)は凄いですね。ザック選手が以前から行っていたのですが、今シーズンは多くの選手がピンクのバッシュを履いて試合に臨みました。その翌月のオレンジリボン運動でも、選手が積極的にオレンジのものを身につけるなど、周りの選手の意識も本当に凄いです。あとは田中選手が朝早く起きて渋谷のごみ拾いをしていたのも印象的でした。『朝が早いのは苦手』って言っていたのですが、しっかり起きてゴミ拾いしていたので安心しましたね(笑)。」
平岩選手「僕はホームゲーム会場で行っている、飲料カップを洗って資源に回す『Re-CUPプロジェクト』。あとは試合観戦時にマイボトルの持参を呼びかける『マイボトル推進プロジェクト』ですね。これらの他にも、ホームゲーム自体がCO2排出量を削減するという取り組みの元に行われているので、会場に来るだけで環境問題に対する意識が出てきますよね。」
※10月ピンクリボン月間 活動レポート https://www.alvark-tokyo.jp/news/detail/id=17370
「アリーナに来るだけで、気づいたら環境に良いことをしていた」ーアルバルク東京特有の取り組みとはー
ーーマイボトル推進プロジェクトやRe-CUPプロジェクトに、実際に参加した方々の様子を教えていただけますか。
髙島さん「マイボトル推進プロジェクトは、持参したマイボトルの写真をTwitter投稿するだけで、くじが引けて当たりが出たら景品グッズもらえるという分かりやすい活動なので、参加しやすそうだなと思っていただけています。Re-CUPプロジェクトに関しては、たまに見かけるのは、試合中に沢山ビールを飲んでくださるお客様は手元にカップがいくつも重なっていて、帰り際にまとめてRe-CUP WASHER(リカップウォッシャー)でカップを洗っていたりしますね(笑)。もっと普及していけたらなと思っています。」
浅野さん「あと実は、昨シーズンから実施しているハリセン回収(古紙回収)は多くの方々に参加いただいていると思います。燃えるゴミではなく、しっかり分別をしてリサイクルに回すということですね。」
髙島さん「会場にいらっしゃるお客様も非常に意識が高く、写真をSNSに載せてくださった方もいます。大変有難いです。」
ホームゲーム会場での「マイボトル推進プロジェクト」ブースとハリセン回収BOX
現在のホームゲーム会場には2台のRe-CUP WASHER(リカップウォッシャー)が設置されている
「子どもたちに夢や希望を」「より良い未来を」
ーーこれまでの活動を振り返って、クラブとして変化したところや、今後の展望について教えてください。
浅野さん「まずは、こういった活動を好意的に受け取ってくださるパートナー企業様が多くて、賛同してくださる会社数が2倍近くに増えました。また、バスケという文脈だけではなかなか広がらなかった方々との繋がりが増えましたし、クラブとしても将来や世の中の人々のために変わっていけるということは実感しています。『バスケだけではないアルバルク』となっていけたらいいなと思っています。」
高島さん「あとはやはり、ファンの方がSNSで発信してくれるようになっていることですね。もっと大きな輪にしていけたらと思います。”ALVARK Will”として名前を付けて活動しているのは未だ1、2年なので、継続していけば、より良い未来が見られるのかなという期待があります。」
ーー最後に、プロスポーツ選手が社会貢献活動する意義や、どんな想いを持って活動に取り組んでいるか、選手のお二人から教えてください。
平岩選手「(プロ選手が)SDGsへの取り組みを行う一員であることは、活動を通して皆さんの記憶に残るきっかけになると思っています。クリニック以外の活動でいうと、交流の中で相手の発言から学ぶこともあるので、自分でも学びを高めていくことは大事にしています。」
藤永選手「僕らの(プロ選手という)仕事は一人ひとりが注目を浴びていて影響力があると思うので、社会的責任活動を通して多くの人に良い影響を与えられると思っています。また僕自身、高校と大学で怪我に苦しんで思うようなプレーが出来ず悩んでいたのですが、諦めずにプロになれました。子どもたちの中にも怪我や病気で悩んでいる人が沢山いると思うのですが、自分たちのプレーやオフコートでの活動を通して夢や希望、元気を与えていきたいですし、諦めずに頑張っていくことの大切さを伝えていきたいと思っています。」
※「ALVARK Will」については特設サイトをご覧ください。https://www.alvark-tokyo.jp/alvarkwill/