「必ず自分に返ってくる」佐藤卓磨選手が社会貢献活動をする理由と伝えたい想い
「プレーすることでたくさんの人から応援していただいているので、オフコートで恩返しがしたい」
現在、千葉ジェッツでプレーし、日本代表としても活躍している、北海道出身の佐藤卓磨選手は、2021年に社会貢献活動「シュガプロ」を立ち上げ、自ら絵本を製作して子どもたちに絵本を寄贈したり、一人親世代のご家庭への支援を行っています。
佐藤選手はどんな想いで「シュガプロ」を立ち上げ、活動に取り組んでいるのか、そして活動を通して伝えたい想いとは。
「本当にバトンタッチという感じ」ー次世代の子どもたちへの熱い思いー
ーーシュガプロを立ち上げる以前に、プロになってから取り組んでいた社会貢献活動はありますか。
佐藤)前所属の滋賀レイクスにいたときに、子どもたちにチケットを買って試合を見に来てもらっていました。あとは地元の北海道で震災があったときに被災地の復興活動をしていました。ただ、積極的に力を入れて活動を始めたのは千葉ジェッツに入ってからですね。
ーー佐藤選手はどのような思いでシュガプロを立ち上げたのでしょうか。
佐藤)自分が本当にバスケから色々なことを貰っているので、スポットライトを当ててもらえる現役のうちに、次の世代の子どもたちに向けて何か伝えられれば良いなと思い、それをきっかけにシュガプロを立ち上げました。
あとは僕自身が好奇心旺盛な性格もあって「まず何かやってみたら、面白いことが起きるんじゃないか」と思い始めました。
ーーシュガプロのポリシーを教えて頂けますか。
佐藤)子どもたちには良い面でもいいし、時には反面教師で良いから、自分の活動を見て何か感じてもらえればいいなという気持ちでやっています。本当にバトンタッチという感じでやっています。あとは女子バスケやW杯の歓喜を見て、男子バスケもいつか世界の大きな舞台で輝きたいなと思っていて、もちろん僕自身も日本代表を目指して頑張ってますが、僕じゃなくても八村塁さんや渡邊雄太さんのような人材がもっともっとバスケ界に現れて欲しいと思っています。「次の子どもたちのために出来ることをする」「子どもたちが活躍したら、結局自分たちに返ってくる」と思っています。「本当にバスケ界を盛り上げたい」という、ただその一心ですね。
ーー実際にシュガプロを立ち上げてみて驚きだったり新たな発見などはありましたか。
佐藤)絵本を作ったことをきっかけに、絶対に出会うことが出来なかったような人と会えたり、絵本から話が色々と広がるようになりました。本当に良いこと尽くしですし、僕自身が好奇心旺盛だからこそ、一歩外に出たことによって更にやりたいことが出てきました。もう誰も、自分も自分を止められないんじゃないかと思います(笑)
「周りに流されず自分の強いところを持ち続けて欲しい」
ー絵本に込めたメッセージー
【「ぼくはキリン」ストーリー】
「ぼくはキリン」は、引っ込み思案のキリン。何に対しても自信が持てず、まわりの動物たちの遊びの輪にもなかなか入れません。あるとき、動物たちの間でバスケットボールが大流行。それでもキリンは仲間に入ろうはしません。ある日、試合に出るはずだったサイが試合に出ることができなくなってしまいました。そこで、チンパンジーはキリンに声をかけます。「キリンくん、かわりにでてくれないかな?」。バスケットボールに出会ったキリンは少しずつ変わっていきます。そして仲間と試合に挑んだキリンは、大切なことに気が付くのです。
ーーなぜ絵本を作ろうと思ったのか、背景を教えてください。
佐藤)まず1つ目が、どうせやるなら好奇心が湧くものが良いなというのがありました。昔から母親に本や絵本を読んでもらっていて、好きでした。なので、子どもたちになにか伝えるなら絵本が良いなと思いました。
もう1つがコロナ禍で実際に子どもたちに接することができない中で、「関節的に伝わるもの」で「形に残るもの」がないかなと探していたら絵本に辿り着きました。
ーー絵本製作を進めていく上で、佐藤選手が大事にしていたことや拘っていたことを教えて頂けますか?
佐藤)僕自身プロになれた理由の一つとして、現在長崎ヴェルカに所属している野口大介選手が、当時レバンガ北海道にいた時に実施していたクリニックに参加して、「バスケ上手いね!プロになれるよ!」という一言で「自分もプロ選手になりたい」と思ったんです。コロナ禍でも子どもに自信や自己肯定感を持ってもらいたいというのがこだわりでした。
ーー野口選手のクリニックを佐藤選手が受けていたんですね!
佐藤)そうなんです。初めてプロ選手と関わった時で、それ以来野口さんは僕の憧れの人です。野口さんがいなかったら今ここに僕はいないですね。野口さんからしたら、当時の僕はただの子どもだったかもしれないですが、僕にとってはスーパーヒーローでした。子どもってそういうところを見てると思うので、「周りに流されず自分の強いところをずっと持ち続けて欲しい」ということを子どもたちに一番伝えたいですね。
ーー実際に絵本が製作されて反響や感想を教えてもらえますか。
佐藤)まさか自分が絵本を作るなんて思ってなかったので、皆さんのおかげで「こんな大きいことになっちゃったよ」という感じです。反響も凄くて、波のように広がっているという感覚があります。
あとは、この絵本は僕だけではなくて、多くの千葉ジェッツのスタッフの方が動いてくれました。他にも出版社の方や絵本作家の方など、本当に多くの人たちのおかげで製作出来ました。本当に嬉しかったです。バスケをやっているだけでは出会えない方々とたくさんお話でき、貴重な経験となりました。
ーー実際に読んだ子供たちの感想は聞かれましたか。
佐藤)僕自身が子どもたちに読み聞かせをしました。最初どうやったら良いか分からなかったんですけど(笑)、絵本作家の方の絵のレベルも高かったので、子ども達がのめり込んでくれて拍手もしてくれました。
ーー絵本のストーリーも佐藤選手が考えて、主人公のキリンが自分の良いところを見つけて、自信を持つという内容ですよね。
佐藤)そうですね。この世の中、辛いことや大変なことがたくさんあると思うんですが、絶対誰にでも良いところはあります。自分の適性を考えたり、会社に必要な適材適所がありますが、「一人一人が自分に持っている良いところを見つけて欲しい」という思いで作りました。
※当初寄贈のみで販売は行っていなかった「ぼくはキリン」ですが、「絵本を読みたい」というお問い合わせをたくさんあり、また、佐藤選手の絵本を千葉県内のみならず、地域を超えてひとりでも多くの方に読んでいただきたいという想いから、電子書籍化が決定。
詳細は下記よりご確認ください。
▼千葉ジェッツ「【お知らせ】佐藤卓磨選手の絵本「ぼくはキリン」Kindleでの配信開始について」https://chibajets.jp/news/detail/id=21353
シュガプロの今後の展望について
ーー絵本製作以外の活動について、具体的な内容と思いや背景を教えて頂けますか?
佐藤)まず1つ目はラシード選手と一緒に、特別支援学校の子どもたちにバスケ教室を実施して、一緒に汗を流したり千葉ジェッツの選手を紹介したことです。2つ目は一人親家庭の子どもたちと一緒に芋掘りやトマトの収穫といった農業体験をしました。コロナの状況が少しずつ落ち着いてきたので、コロナ禍でずっと家にいるのを苦痛に感じていた子どもたちや、一人で子どもの世話をする親御さんたちの気分転換になればと考え、一人親家庭に向けた活動をしたいという思いがありました。当日は子どもたちや親御さんたちの笑顔が見れて凄く嬉しかったです。
ーーシュガプロで今後実施していきたい企画や、進行している企画を教えてください。
佐藤)実現出来るか分からないですが、観光農園を作って、その中にバスケットコートとカフェを作りたいです!家族で農園体験が出来るだけでなく、子どもたちはバスケを楽しんで、親御さんたちはカフェでゆっくりできるような、家族皆が楽しめる場所をイメージしています。
スポーツ選手がオフコートで社会貢献活動をする意義とは
ーースポーツ選手がオフコートで社会貢献活動をする意義は何だと思いますか。
佐藤)活動している自分が言うのも変かもしれませんが、プロ選手がやってるからといってスポットライトが当たるのは違うと考えています。注目されていないだけで社会貢献活動をしている人は沢山います。ただ、自分が社会貢献活動をすることで他の人にもスポットライトが当たりますし、それをきっかけに新たに出会いが生まれることもあります。社会貢献活動をしていて嬉しいなと思える瞬間ですね。注目してもらえる立場だからこそ、選手が発信することで地域の社会課題を知ってもらえたり、活動に共感してもらえる。スポーツ選手が社会貢献活動をする意義があると考えています。
ー『必ず自分に返ってくる』ー若手選手に伝えたいこと
ーー若手選手に伝えていきたいことはありますか。
佐藤)今のBリーグは過密日程でオフの日も休息に時間を使っている選手が多いと思うので、社会貢献活動をすることが難しい面もあるかもしれません。ただ、自分自身の為にも社会貢献活動をした方が良いです。
練習後に携帯ゲームをしている時間があるなら、興味あることで社会貢献活動と組み合わせられないかなと考えて行動した方が良いということを伝えたいです。
あとは、セカンドキャリアで必ず自分に返ってくると思っています。若くして一般的な水準よりも高いお給料を頂いているので、バスケしかしていなくても良い環境だと、目的がバスケしかないので日常生活が漠然としたものになってしまうんです。でも、僕たちは選手として価値を付けてくれているからバスケ選手でいられています。バスケ以外を知らないと、社会の荒波にもまれたら何も出来ないので、若い時からバスケ以外の活動や経験を絶対しておいた方が良いと思います。僕自身、良いことも悪いことも色々経験してきたので、「すべては絶対に自分のためになるから」と若手の選手に伝えたいですね。
ーー社会貢献活動をして、実際に自分に返ってきたなと思う瞬間はありましたか。
佐藤)僕の場合、本当に人との出会いが増えたというのがあります。全く違う業界の方から突然「お話を聞かせてください」とメッセージが来ることもありました。バスケだけでは出会うことが出来なかった、外の方の声を聞く機会が出来たことが自分に返ってきたなと思った瞬間かもしれないですね。
ーーそういった人脈がセカンドキャリアにもきっと活きてくるんですね。
佐藤)活きてくると思います。社会貢献活動を通じて様々な人と関わることで、誰かの影響の輪に広がっていきます。実際、僕も10年以上の時を経て野口さんの話をしました。そういったことが最終的に日本のバスケの歓喜に繋がっていくんじゃないかと思います。ただの自己満と思われたりするかもしれないですが、自分自身が思ってるより若手の選手も含めてBリーグの選手はSNSのフォロワーだけでは計り知れない影響力があります。だから「自分に価値がある」と思って若手の選手たちには動いて欲しいですね。
ーー最後に、何か伝えたいことはありますか。
佐藤)これからどんどんBリーグが盛り上がって、バスケ界の歓喜を味わえるように毎日大事に生きていきましょうと思っています。
ーーありがとうございます!声出し応援も解禁されて、これからお客様も戻ってくると思うのでさらに盛り上げていきたいですね。