名古屋ダイヤモンドドルフィンズがスポーツの力で地域課題に挑む(後編)~選手の想い~
現在、日本代表選手を多く擁する名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、プレーを通して夢や希望を与えるだけではなく、スポーツの力で地域の課題解決を担う存在になるために、社会的責任イニシアティブ「ドルフィンズスマイル」を推進しています。同クラブでは、オフコートの活動に関心のある所属選手も多く、選手発案の取り組みも積極的にバックアップしていることも特徴です。今回は、ドルフィンズスマイルの3本柱の活動アンバサダーとなる張本天傑選手、齋藤拓実選手、須田侑太郎選手の3名にお話を伺いました。
※前編の記事はこちら:https://www.bleague.jp/b-hope/hope-story/story_detail/id=236056
選手の発信力は絶大。クラブの選手がアンバサダーに就任!
B.LEAGUE 2022-23シーズンより、具体的な地域課題に対応した3つの柱のそれぞれに、 アンバサダー選手を立てて活動を推進するドルフィンズスマイル。本プロジェクトを中心となって推進する経営企画グループの須賀綾乃さんは、選手起用の背景について以下のように考えています。
「選手の発信力は絶大です。アースアワー(※)の啓発では、須田選手と坂本選手が電気の消し方を楽しく実践した動画に大きな反響がありました。気候変動は難しい分野でもあるので、ファンの方々にとって身近な存在である選手目線での発信は、非常に効果があります。選手へフードドライブを実施した時には選手の方から『こういうものは持って行っていいのか』と聞いてきてくれたり、実際にヘッドコーチや多くの選手が食糧を持ってきてくれました。自主的に発信し、積極的に活動をしてくれる選手が多いので、”選手が(選手である)今だからできること”として、クラブとしても全面的に露出をする。お互いに主体的に取り組むことで影響力も高まるのではないかという理由から、重要ニーズ(社会課題)に対応した3つの分野にそれぞれアンバサダー選手を立てることにしました。」(須賀さん)
(※)世界中の人々が同じ日(毎年3月の最終土曜日)・同じ時刻(20:30~21:30)に電気を消し、地球温暖化防止と環境保全の意志を示す、世界最大級の消灯アクション
「子ども支援」には4歳の子どもの父である張本天傑選手、「気候変動」には2022-23シーズンキャプテンの齋藤拓実選手、そして「女性活躍推進」には須田侑太郎選手がそれぞれアンバサダーを務めます。
”子どもたちに夢を与えたい”「張本天傑シート」に込められた想い
張本選手自らがクラブに提案して実現に至った本企画は、張本選手考案のグッズやフード、特典付きの観戦シートの収益の一部が、難病に苦しむ子どもたちへ寄付されるという内容です。
張本選手へのインタビューはZoomで実施
ーーこの企画を始めようとしたきっかけを教えてください。
張本選手「まず、新型コロナウイルスが流行する前までは、試合後のサイン会など、ファンの方々と交流する機会が沢山ありました。コロナ禍でそのような交流ができない中、選手とファンの方々を繋ぐために何かできないかと考えてつくったものが『張本天傑シート』でした。また、コロナ禍前に、難病の子どもたちがいる病院訪問をクラブとして行っていて、沢山の子どもたちと話をしたり、バスケットボールをして触れ合ってきたのですが、コロナ禍でそれが出来なくなってしまいました。難病を持つ子どもたちは部屋から出られなかったり、ベットから起き上がれない子どもたちも多いんです。未だコロナ禍で制限がありますが、できることを考えていきたいですし、企画の収益の一部を寄付することにしました。」
ーー企画は細部までこだわり、張本選手自らも制作業者とやり取りをしたと伺いました。取り組む上で大事にしたことは何でしたか。
張本選手「一番大事にしたことは、ファンの方々にしっかり喜んでもらいたいという想いでした。価格に見合う内容にすることもそうですが、『ファンの方々が何を受け取ったら嬉しいか』を自分自身で考えた方が、その想いもファンに伝わると思ったからです。だから、グッズのセレクトやデザインの検討、業者への発注なども僕が行いました。本当に大変でしたが、ファンの皆さんが喜んでくれて笑顔が見れて良かったです。」
ーー2022-23シーズンからは、クラブとして推進する子ども支援に特化した活動「COCO(ここ)」プロジェクトのアンバサダーに就任することが決まりました。張本選手ご自身も4歳のお子さんをお持ちですが、どのような想いで活動をしていきたいですか。
張本選手「子どもは日本にとっての未来だと思っていますが、日本では虐待を受けている子どもや貧困の状態にある子どもが沢山います。僕が活動をして発信していくことで、周りの人たちをもっと巻き込んで一緒に活動し、少しでも子どもたちが良い環境で生活できるようになってほしいと思っています。プロ選手としてファンの方々に良いプレーをお見せしていくことは第一ですが、コロナ禍で制限があったとしても出来ることを考えていきたいですし、僕自身、子どもたちに夢を与えられる選手になりたいと本当に思っています。病院訪問をした時に『会えて良かった』と言ってくれた子どもたちも含めて、子どもたちが少しでも笑顔になれるように、今後も活動を続けていきたいと思っています。」
ドルフィンズスマイル「COCO(ここ)」プロジェクトについてはこちら:https://nagoya-dolphins.jp/dolphins-smile/detail/id=16289
齋藤選手がコロナ禍の学生のために”青春の思い出”を
「通りすがりの⽂化祭~”⻘春”取り戻し⼤作戦~」。これは、コロナ禍で学校行事が中止となった学生に、「青春時代の思い出をつくる場を提供できないか」という齋藤選手の想いから立ち上がったプロジェクトです。クラウドファンディングで資金を募り、齋藤選手と学生が一から企画を考えました。
齋藤選手へのインタビューはZoomで実施
ーーこの企画を始めようとしたきっかけを教えてください。
齋藤選手「きっかけはテレビの音楽番組でした。アーティストのあいみょんさんが高校生1000人と一緒に合唱曲を作り上げる企画で、その楽曲の裏にはコロナ禍で大変な思いをしている高校生の日常生活がありました。部活動がなくなったり、学校行事がなくなったり、入学当時からずっとマスクをしているから顔が分からず友達を作りにくかったり。自分が過ごしてきた学生時代からは考えられなかったですし、そんな経験をした高校生のことを思うと、自分にも何か出来るのではないかと思ったんです。それで翌日すぐにオフコートキャプテンの中務選手に相談をしてフロントスタッフと話を進めました。」
ーー最終的に開催した屋外イベントは、約30名の学生と2回のワークショップを通して一から考えた企画。初めて取り組んでみた活動はいかがでしたか。
齋藤選手「僕が大事にしていたことは、とにかく楽しんでほしいということでした。ご参加いただいた学生の皆さんもお互い初対面の方々がいて緊張していたり、考えているアイディアが本当に実現できるかという不安もあったと思いますが、そういった過程も一緒に取り組むことで思い出にしてほしかった。『楽しんでやろう!』と参加者の皆さんにはずっと話していました。また、沢山のアイディアが出る中で、予算も考えながらテーマに沿った企画を選んでいくことは凄く難しかったです。しかし、世界平和をテーマにしたアート企画は、僕自身本当にすごいなと感心していました。本番イベントの後も、『楽しかった』という声だけでなく、『社会人になる上での貴重な学びになった』と言ってくださる参加者もいました。これは僕自身も同じで、自発的にやりたいことを形にできたのは初めてでした。僕も一歩、新しいチャレンジができてご参加いただいた皆さんには凄く感謝しています。」
ーー2022-23シーズンからは、クラブとして注力している「気候変動」への取り組みのアンバサダーに就任することが決まりました。どのような想いで活動をしていきたいですか。
齋藤選手「アンバサダーの話を聞いたときは、正直びっくりしました(笑)。僕自身、気候変動の知識がまだあまりないので少し不安な気持ちもありますが、先ほど話した文化祭の活動でも、選手が発信することの影響力を改めて感じています。なので、僕が発信していくことでファンの皆さんにもご協力いただきながら、ファンの皆さんと一緒に学び、行動していきたいと思っています!」
「微力かもしれないが何かをすることが大切」須田選手がスポーツ選手という立場で考える社会貢献活動
須田選手へのインタビューはZoomで実施
ーーこれまで、チャリティグッズ販売や観戦シートの企画を通して社会貢献活動に携わってきたという須田選手。活動のきっかけはどのようなものでしたか。
須田選手「きっかけは、社会貢献活動をしている選手が増えてきているのを目の当たりにしたことです。他の選手の活動を目にする機会が増えたり、自分自身としても影響力がある立場として活動をやるべきという自覚が出てきました。以前に所属していたクラブでは、新型コロナウイルスが流行してからすぐ『何かできることはないか』とクラブに協力していただいて、チャリティユニフォームやTシャツの売上を、新型コロナウイルス緊急支援を行っている団体に寄付させていただきました。スポーツ選手という立場で社会貢献活動をしていくことはとても大切なことだと思いますし、微力かもしれませんが、『何かすること』が大切だと思っています。」
ーー2022-23シーズンからは、クラブとして注力している「女性活躍推進」への取り組みのアンバサダーに就任することが決まりました。どのような想いで活動をしていきたいですか。
須田選手「最近、メジャーリーグの日本人選手が産休制度を取ったというニュースをたまたま見て、同じスポーツ選手がそのような動きをしていることは凄く印象的でした。また、以前所属していたクラブの選手がピンクリボン運動を行っていたりと、身近な選手も女性に関する活動を行っています。お話をいただいた時は、どのような活動ができるか、まだわからないというのが正直な感想ではありましたが、B.LEAGUEは女性ファンも多いですし、僕個人のファンクラブも9割が女性ファンという身近な存在です。僕自身、この分野は今まで触れてこなかった分野ではありますが、これを機に、『女性活躍推進』に向き合って理解を深めていきたいと思っています。」
また、須田選手はインタビューの中で「僕も当時はやり方も何も分からなかったですが、色んな方々に協力していただきました。微力ではあると思いますが、活動する人たちが増えれば大きな力になります。プレーや試合をすることは第一に大事ですが、スポーツ選手がプレーをするだけでいい時代は終わったのかなと思っています。そういった点でも社会貢献は大切だと思います」と、スポーツ選手が社会貢献に取り組む意義についても考えを述べられました。
スポーツやクラブチーム、選手が持つ力で社会課題に挑戦する「ドルフィンズスマイル」。そのプロジェクト名通り、活動の裏には「ドルフィンズコミュニティをもっと笑顔にしたい」という所属選手やクラブスタッフの想いがありました。
ドルフィンズスマイルについてはこちら:https://nagoya-dolphins.jp/dolphinssmile/