2022/09/02B.HOPE STORY#017

名古屋ダイヤモンドドルフィンズがスポーツの力で地域課題に挑む~ファンと共に地域を笑顔に~

まもなく開催されるB.LEAGUE 2022-23 シーズンの開幕戦を、ホームアリーナで迎える名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。日本代表候補選手を多く擁する同クラブは、2020年12月世界のスポーツ界が一丸となり気候変動に取り組む「スポーツ気候行動枠組み(Sports for Climate Action Framewotrk)」に、日本のプロスポーツの1部所属クラブとして初めて署名し(2021年12月には同枠組み新基準に日本から初著名)オフコートでの活動でも世界から注目をされています。そんな同クラブが推進する社会的責任イニシアティブ「ドルフィンズスマイル」”ドルフィンズコミュニティが笑顔になれるように”との想いで、ファンの声に耳を傾け、ファンと共に地域の課題解決へと歩みを進めています。

本インタビューでは、ドルフィンズスマイルを中心となって推進する経営企画グループの須賀綾乃さん、そして注力プロジェクトのアンバサダーを担当する#2 齋藤拓実選手、#8 張本天傑選手、#11 須田侑太郎選手にお話を伺いました。

※本記事は前編となります。後編(3選手へのインタビュー)は10月初旬公開予定です。

プロスポーツクラブとしての責任を果たし、地域への恩返しを

「ドルフィンズスマイル」が立ち上がったのは2020年。クラブビジョンである「地域から誇りに思ってもらえるスポーツクラブ」を目指し、オンコートで夢や希望を与えるだけでなく、スポーツの力で地域が抱える課題解決を担う存在になるべく本プロジェクトがスタートしました。

須賀さんは「ドルフィンズがプロスポーツクラブである以上、社会的責任を果たしていくことは必須で、これが立ち上げの経緯です。ドルフィンズが名古屋の皆さまに誇りと思ってもらえるクラブになれるよう、地域への感謝の気持ち、恩返しをする気持ちを大切にしています。そしてファンの力を未来に繋げたいという想いがありました」と、背景からこれまでの2年間、環境や食品ロス、子ども支援や女性活躍推進、防災対策やホームゲーム会場でSDGsを学べる体験型アトラクションなど、幅広い分野で活動を行ってきました。

ドルフィンズスマイルの中心推進者である須賀綾乃さん。本インタビューはZoomにて実施。

名古屋の課題を知ってもらう企画から、ファン参加型の企画まで幅広くチャレンジ

「名古屋は交通事故が全国で常にワーストを競う地域で、車社会ゆえの社会課題があり、啓発活動には積極的に参加をしています。災害の観点でも、東海地方に大きな地震が来ると予測されているので、Bリーグが推奨している『ディフェンス・アクション』(※1)をドルフィンズのスクール生に行いました。また全国的にも児童虐待や子どもの貧困、若者の自殺問題も深刻で、近年もそれぞれ件数は高止まりの現状です。そんな中、全国的にも優良なNPO団体が名古屋にあり、そのような団体と連携することでより影響力のある活動を進められると思い、新しく子ども支援に特化した『ドルフィンズスマイルCOCOプロジェクト』を立ち上げました」(須賀さん)
(※1)ディフェンス・アクションは、バスケをしながら楽しく防災や減災を学ぶことができる、防災バスケプログラム。

ドルフィンズバスケットスクールでディフェンス・アクションを実施

子ども支援に関しては、11月の児童虐待防止推進月間に合わせてオレンジリボン運動や、名古屋市やパートナー企業と連携して児童養護施設の子どもたちをホームゲームに招待してきたと言います。

「オレンジリボン運動を実施するホームゲームでは、フロントスタッフやチームスタッフがオレンジリボンを身につけて試合に臨みます。ファンが『あのオレンジなんだろう』と、コート内でチームスタッフが身に着けるリボンをきっかけにこの運動を知ってもらう活動です。一方で2年間やってきて活動を進化させるという意味でも、NPO団体と協力して、今までクラブだけでは手の届かなかった子どもたちに、シーズン通してホームゲームに来てもらうような企画や、様々な支援を取り組んでいこうと思っています」(須賀さん)

オレンジリボンを左胸に身につけ試合に臨むチームスタッフ

また、これまでの活動で反響のあった取り組みを伺うと、選手も積極的に参加したという「フードドライブ」と、名古屋スポーツコミッションとの連携事業として実施したSDGsを学べる参加型イベントの「ドルフィンズクエスト」が上がりました。

「来場者アンケートでは、『社会貢献活動を行いたいが、きっかけがない』という方が多くいらっしゃって、『ドルフィンズの会場にきたら、楽しみながら社会貢献活動ができる!』と思ってもらえるような、ファンが参加しやすいイベントを中心に企画しています。初めて開催したフードドライブは、多くの方にご参加いただきました。また、選手からもたくさんの食品が集まり、坂本聖芽選手は大きなお米を寄付してくれました 」(須賀さん)と、複数選手も参加したフードドライブは2日間で60名を超えるお客様にご協力いただいた企画でした。
また、実は1番不足している食材は「お米」であると聞いた須賀さん。そこで2022-23シーズンからは、ドルフィンズのホームゲーム会場でファンと取り組む募金活動での資金をもとに、地元の農家さんと連携し「ドルフィンズ米」を作り、地域の子ども食堂などへ届ける「新米をお届け!ドルフィンズ米プロジェクト」(※2)を実施いたします。
(※2)「新米をお届け!ドルフィンズ米プロジェクト」についてはこちら

ドルフィンズクエストはシーズンを通してホームゲーム会場で実施した企画で、ファンが試合までの時間を使ってアリーナを回り、各所にあるSDGsに関するクイズを解いていく学習アトラクション。正解数に応じてドルフィンズアイテムがもらえたり、選手やマスコットと記念撮影ができるなど、ファンにとっても嬉しい特典つき。親子で参加したファンからは「子どもの方がSDGsに詳しいので、一緒に学べて良かったです」とのお声もあり、2021-22シーズンは合計で約1500人のファンが参加した人気企画となりました。

2021-22シーズンに初めて実施したフードドライブ

(左)試合会場でドルフィンズクエストをする家族
(右)全問クリアした子どもたちが齋藤選手と記念撮影

ドルフィンズスマイル3つの柱、「気候変動」「子ども支援」「女性活躍推進」。スポーツの力で社会を動かす。

 

これから3年目を迎えるドルフィンズスマイルにおいて、同クラブが今後特に注力しようとしている分野が「気候変動」「子ども支援」「女性活躍推進」の3つです。なぜこの分野なのか。

「まず、気候変動問題に具体的対策をするという13番はSDGsの中でも最重要項目であり、このままでは2030年までに地球がもたないといわれている中で、私たちが持つスポーツの力を活用しながら、発信していくことが重要と考えています。 子ども支援に関しては、子どもを育てる選手やスタッフも多く、クラブのファンもファミリー層が多いので、私たちにとって子どもはとくに大切な存在ですが、地域には子どもに関する深刻な課題が多くありました。また、アンケートでファンの方々の関心が高かったのが、児童虐待や若年層の自殺問題、そして地球温暖化や災害などの気候変動への取り組みだったので、クラブとしても丁寧に対応していく必要があると考えました」(須賀さん)

気候変動への取り組みに関しては、同日同時間帯に消灯し、地球温暖化や環境保全について考える「アースアワー」をクラブ全体で取り組んだり、ホームゲーム会場の飲食容器を脱プラスチック素材(紙製の容器やバイオマスプラスチックカトラリー)へ変えることでプラスチックごみ削減を目指す取り組みなどを実施。ファンへのアンケートにおいても、「今後はCO2排出量の少ない交通手段を選びたい」と答えた方が約8割に及ぶなど、ファンの意識改革においても成果を上げました。2022-23シーズンは名古屋市と連携し、環境に優しい行動をするとポイントが貯まるアプリを活用した企画を検討中です。

子ども支援においてはより活動の幅を広げていくために、名古屋市のNPO法人3団体と正式にパートナーシップを締結。ドルフィンズスマイル「COCOプロジェクト」(※3)と題して、前項で挙げた「新米をお届け!ドルフィンズ米プロジェクト」に加えて、これまで実施してきたホームゲーム招待(母子家庭支援施設や里親支援施設、子ども食堂などに対して「子どもたちが、いつでもドルフィンズのホームゲームが見られるチケット」の企画)等を継続して行う予定です。
(※3)「COCO(ここ)」プロジェクトに関するリリースはこちら

そして女性活躍推進については、「ここはファンの方々の関心があまり高くなかった分野ではあるのですが、世界的にも取り組むべき問題です。Bリーグやクラブとしても女性ファンが多い中、選手が発信していくことで女性ファンを勇気づけ、日本が世界から大きく遅れをとっている分野の重要課題に、私がドルフィンズスマイルをリードしていきながら挑んでいきたいです」(須賀さん)と、3つの分野を注力していくに当たっては、世界事情や地域の課題、ファン層やファンが持つ関心分野の観点から決めたものでした。

ホームゲーム会場の飲食容器を脱プラスチック素材へ変えるなどの取り組み

児童養護施設の子どもたちが招待で試合観戦

「社会的責任活動がファンやスポンサーからどう見られているのか、クラブにとってどういう価値があるのか」特にこの1年はクラブ内でも地道に訴えてきたと言う須賀さんは、ファンの方々を巻き込んで一緒に社会を変えたいという想いを持ってらっしゃいました。オンコートだけでなく、ドルフィンズコミュニティの人たちをさらに笑顔にするドルフィンズスマイルのオフコートの活動にもぜひご注目ください。

後編では、ドルフィンズスマイルの各注力プロジェクトのアンバサダーに就任した3選手(齋藤拓実選手、張本天傑選手、須田侑太郎選手)へのインタビューと、齋藤選手と張本選手が過去に実施した社会的責任活動についてご紹介いたします。


※ドルフィンズスマイルについてはこちら:https://nagoya-dolphins.jp/dolphinssmile/