2024/11/22B.HOPE STORY#045

ライジングゼファーフクオカ谷口光貴選手&加藤寿一選手インタビュー
<地域と共に創る未来>

ホームタウン活動のけん引役として、“オフコート”のキャプテン制度を設けているライジングゼファーフクオカ。フロントスタッフ主導だけではなく、選手自らの発案で近隣の学校を訪問してあいさつ活動を行うなど、地域との結びつきを強くしようと頻繁に活動しています。今回お話を伺ったのは、率先してホームタウン活動を行っている谷口光貴選手と加藤寿一選手です。現役B.LEAGUE選手として世の中に影響を与えたいという2人が口を揃えて語ったのが、活動を“きっかけにしてほしい”ということでした。

谷口光貴選手インタビュー
「保護犬に対しての活動の幅をもっと広げていきたい」

――保護犬支援活動の“3Pシュート ワクチンショット(3Pシュート1本成功につき犬2頭分のワクチン購入費用を谷口選手とクラブが協力して寄付する活動)”は、どういう経緯で実現に至ったのでしょうか?

谷口)3年前に犬を飼い始めたところで、保護犬や保護猫の問題を知りました。自分も何か行動したいと考えていたのですが、最初は誰に相談していいのかわかりませんでした。(2023-24シーズンに)ライジングゼファーフクオカに移籍したタイミングで、フロントに相談し地域の動物愛護団体につなげていただき、昨シーズンの4月から活動をスタートしました。

――ご自身が保護犬や保護猫を知ったことがきっかけなのですね。

谷口)元々実家で飼っていて、犬が大好きでした。ちょうど結婚して犬を飼うことができる環境が整ったタイミングでエル君を迎え入れたのですが、その直後に保護犬の存在を知りました。犬や猫を飼うという際の選択肢の一つになってほしいと考えています。

©RIZING ZEPHYR FUKUOKA

――試合にトレーニングと多忙な中で、実行に移したモチベーションはどんなことだったのでしょうか?

谷口)保護犬の現状や殺処分という現実があることが気がかりでした。まだ生きられる命を人間のわがままで奪ってしまう。絶対に形にしたいという想いを持っていました。

――結果的に24本の3Pシュートを射抜き、48回分のワクチンにつながりました。

谷口)保護センターで寄贈式をさせていただいた際にとても感謝していただきまして、「やってよかった」と思いましたし、SNSで多くのコメントもいただきました。それだけ関わってくれている方がいるのだなとも思いました。まずはファーストステップを踏み出せたので、今後、より大きな活動にしていけるといいなと思っています。

©RIZING ZEPHYR FUKUOKA

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――幅を広げるアイディアもありますか?

谷口)活動を知っていただいた企業さんで、ワンちゃんの服などを作っている会社があり、オリジナルグッズを作って、売上の一部を寄付するという話をしています。また、動物愛護センターへの訪問回数を増やしたり、イベントに顔を出したりすることもできたらいいなと考えているところです。

――何かをやりたいけれど形にできていないという選手たちに、アドバイスを送るとしたらどんな言葉になりますか?

谷口)僕は犬が好きでそういう活動に目を向けた経緯があり、 やはり好きなことから考えることをスタートしてもいいかなと思っています。全部がバスケに繋がることでなくても趣味や好きなことでも問題になっていることがたくさんあると思うので、そこに気付ければアクションを起こせると思います。好きなことをより深掘りすること。それがすごく大切かなと思います。

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――ホームタウン活動ということでは、どんな活動を行ってきましたか?

谷口)「3Pシュート ワクチンショット」以外ですと、海岸のゴミ拾い活動があります。かなりゴミが流れ着いていて、生態系にも影響を及ぼしてしまいます。ライジングゼファーとしてもそうですし、僕自身も気にして活動しています。

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――活動の中で、地域との結びつきが強くなった体感はありますか?

谷口)クラブとしては多くの市や町とフレンドリータウン協定を結んでいるのですが、それは地域の活動を受け入れてもらえている証しなのではないかと感じています。個人的にも動物愛護センターの方など地域の方と直接会う機会が増え、より深くいい関係を築けていると思います。継続して、深く関わっていけたらと思っています。

プロ選手として活動する上で、現役が一番影響力を持っていると思います。地域の課題やいろいろな社会問題に僕たちが目を向けることで、よりたくさんの人に知ってもらう機会になります。他の選手とも一緒に活動する機会が増えていますが、自分がより主体的に考えて活動に移すことが重要です。今後も地域のために、いろいろなことをやっていきたいです。

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――今後の活動について、やりたいことがあったら教えて下さい。

谷口)まずは「3Pシュート ワクチンショット」を続けることと、それ以外では子供たちが伸び伸びといろいろなことにチャレンジできるような環境作りをできたらと思っています。僕にも2人子供がいて、まだ小さいのですが、どうすれば自分たちのやりたいことにチャレンジできるのか、主体性を持って取り組めるような子たちに育ってくれるかというのを、色々と考えながら過ごしています。

(画像はイメージです。合計本数を試合ごとに更新していきます。)

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――子供たちにはどんなメッセージを伝えたいですか?

谷口)自分でしっかりと考えて行動してほしいというのは伝えています。周りの意見に同調するだけでなく、自分の好きなことにどんどんチャレンジして、たくさん失敗して学んで次に繋げてほしいですね。

加藤寿一選手インタビュー
児童養護施設訪問と新たな計画「一つのきっかけになってくれたらうれしい」

――児童養護施設には定期的に訪問されているそうですね。

加藤)僕がクラブに入った(2023年)6月からです。時間が作れれば行くという感じで訪問していました。元々子供たちと交流することが好きというのもあります。一緒にバスケをして遊んだり、試合を見てもらってお話したりと、一番思い入れを持っています。施設も多くの場所があるので1か所に1回ずつという感じで、6月で一回りできたという感じです。オフシーズンには個人的に、知り合いの児童養護施設を訪問していました。本当に色々な子がいて、触れ合い方もそれぞれだなと感じていて、それも一つの勉強、自身の学びだと思っています。

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――子供たちはどんな反応を見せますか?

加藤)単純に身長が大きい人(加藤選手は192cm)が来たというのを見て、すぐに「おんぶして」とか「抱っこして」と来てくれるので、こちらが緊張する暇もないくらいですね(笑) 僕としては子供と同じ目線に立つというところを大事にしています。気持ちの面でしっかり合わせることを大切に考えていて、キャラクターなど好きなものがわかったら、そこから話を広げてという感じでコミュニケーションを取っています。

――同じ目線で興味あることってやってく中で、子供たちの表情も変わるわけですね。

加藤)そうですね。好きなことをたくさん話すことで、表情も柔らかくなりますし、笑顔も増えます。例えば仮面ライダーを好きな子がいた時には僕が怪獣役になって、仮面ライダーごっこをしました。「変身してみせて!」と声をかけると、笑顔でやってくれますよ。ちなみに最後は僕がちゃんとやられました(笑) あとは、僕が腕を前に出して、どこまで高くジャンプできるかといったようなことをやったりしていますね。

――話を伺う限り、加藤選手もエネルギーを受け取っている感じですね。

加藤)子供たちと触れ合う時は僕も心の底から楽しんでやっています。その子供たちが試合観戦に来てくれると、“あの子たちのためにも頑張ろう”と、エネルギーになりますね。

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――選手として、ホームタウン活動をする意義とか重要性をどう感じていますか?

加藤)クラブとしては皆さんに知っていただく手段だと思います。もっとファンを呼んで、満員の中でプレーしたいという気持ちもありますし、そのためにも重要な活動だと思います。また、個人的には子供たちと向き合う活動が多いので、目標、道しるべになるような人間でありたいと思っています。そして活動をきっかけにバスケを始めてくれる子がいたら、よりうれしいですね。

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――活動の中で伝ってほしいメッセージや思いを教えて下さい。

加藤)まず子供たちにとってかけがえのない体験であってほしいですし、色々な活動をしていく中で、関わった人にとっては前向きになるような経験になってほしいです。いずれにせよ、交流が一つのきっかけになって好転してくれたらうれしいですね。

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――今後の活動について、こんなことをやりたいといったアイディアはありますか?

加藤)公表してなかったのですが、実は幼少期に吃音症(言葉がどもる、同じ言葉を繰り返すなどの発話症状)でした。今でも認知度が低いと思いますが、僕も本当に嫌でしようがない時があって辛い思いもたくさんしました。今でこそ、こうやって人前でも吃音が出づらくなりましたが、大人になっても症状が出てしまう人も少なくありませんし、場合によっては障害認定されたりもします。変な風に思われたくないから、もう喋りたくないとか、人と交流したくないという考えになって、本当はやりたいことをあきらめることもあると思うのです。元々吃音を持っていて、こうやって人前でも話せるようになった存在として、悩みを聞いたり、話をしたりできれば、道が開ける人もいるのではないかと思っているので、行動に移していきたいです。

――加藤選手が言葉にすることで多くの人に知ってもらうことができますし、心の拠り所になる方もいるはずです。

加藤)そうなってくれたら、うれしいですよね。例えば、吃音症の子供たちに試合を見てもらったあとに話をするような機会があれば、それが何かのきっかけになる子もいると思っています。そのために、僕も心理カウンセラーの勉強もしているところで、ぜひ形にしたいです(加藤選手は心理カウンセラーベーシック資格を所持)。
僕にどこまで影響力あるかわからないですが、今人前に立つ仕事をしているので、吃音症の方たちに何らかのきっかけを作る活動をしたいと思っています。

©RIZING ZEPHYR FUKUOKA