JBPA ASSIST ~バスケ選手があなたの力に~(後編)
子どもたちに夢を バスケ選手が全国各地で活動を実施
B1~B3でプレーする選手が所属する日本バスケットボール選手会(以下「JBPA」)。
2020年以降、新型コロナウイルスの影響により、選手が子どもたちと触れ合う活動が出来ずにいましたが、スポーツの活動や人との触れ合いが制限された時間を経て、改めて「自分たちを必要としてくれる方々の力になりたい」という思いを強くし、新たな活動をスタートすることにしました。
今年はJBPAの協力が必要とされる企画を一般公募。そのなかから選定された7件の企画実現のために、選手たちが6月~7月にかけてそれぞれ全国各地へ赴き、またはオンラインで活動をしました。
本企画は、JBPAが社会課題やバスケの普及に取り組む団体や個人の活動を支援するプロジェクト「JBPA ASSIST」の一環として実施するもので、「JBPA ASSIST ~バスケ選手があなたの力に~」と名付けられました。
前編では4つの企画をご紹介しましたが、本記事では残り3つの企画をご紹介します。
※詳細は「JBPA ASSIST ~バスケ選手があなたの力に~」 特設サイトをご覧ください。
なお、「JBPA ASSIST ~バスケ選手があなたの力に~ 」の活動は 、2022 年4月に実施された「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN OKINAWA 選手会× B.Hope チャリティーオークション」で集まった資金やJBPA ASSIST チャリティーオークションの売上を活用するとともに、「B.LEAGUE Hope」の協力のもと実施いたしました。
チャリティーオークションの詳細はこちらからご確認ください。
【対応するSDGs】
前十字靭帯の手術を受けリハビリ中の高校生に激励を
小学校3年生からバスケットボールを始め、中学校ではバスケットボール部、クラブチームに所属し、現在は高校3年生の関谷さん。コロナの状況禍と高校入学が重なってしまい、思うように部活動が出来ないまま3年生になり、これからが本番という矢先、今年5月に前十字靭帯損傷の怪我を負ってしまいました。診断では全治8か月、高校での競技復帰は難しいとのこと。大学でも選手としてバスケットボールを続けたいという関谷さんは、現在地道にリハビリに取り組んでいます。
そんな関谷さんのお父さんが「将来に向けて希望が持てるように言葉をかけて欲しい」との想いで応募し実施が決まった企画です。
7月6日(水)、田口 成浩選手(秋田ノーザンハピネッツ所属/選手会会長)、小室 昂大選手(京都ハンナリーズ所属) 、石井 峻平選手(愛媛オレンジバイキングス所属)、角田 太輝選手(佐賀バルーナーズ所属)の4名の選手たちと関谷さんがオンラインで交流しました。
関谷さんからのたくさんの質問に真剣に応える選手たちで時間はあっという間に過ぎていきました。
前十字靭帯の怪我の経験のある石井選手は「自分も手術が終わった後は足も細くなり、曲がらなかった。日常生活でさえままならない状況でいつバスケットボールが出来るのか不安だった。でも1番伝えたいのは焦らないこと。大学でもバスケットボールをしたい、プロになりたいと思うのであれば、焦らずゆっくりリハビリをして欲しい。」と自信の経験をもとに伝えました。
「大怪我した時にどんなトレーニングをしたのか。またどうやってバスケットボールと向き合っていたのか」の質問に対しては、「一流の選手程、先を見据えて行動をしている。復帰した時のトレーニング等を考え、復帰した時にすんなりチームに戻れるようにしていた」と小室選手は言います。
また「どうやってBリーグに入ったか」の質問に対しては、「もともとは教員志望だった。大学で出た大会に、たまたま来ていた京都ハンナリーズのGMが声をかけてくれた。プロ選手は(学生時代の活躍だけでなく)今後の成長を見据えて取ってくださっている場合もある。常に手を抜かずに真剣に取り組んでいれば結果はおのずとついてくると思う。今辛い状況だと思うが、先を見据えて頑張って欲しい。」(小室選手)、「自分は中学まで野球部で高校からバスケットボールを始めた。大学2年の時、秋田ノーザンハピネッツのGMに声をかけてもらった。無名の選手だったので、結果を残すのも大変だった。1番大事なのは目標を持つこと。過去は変えられない。今は辛いと思うが、リハビリをしっかりやり、目標を決めることがプロに近づく道だと思う。」(田口選手)と、小室選手、田口選手とも自身のプロ選手になった経緯と合わせて「先を見据えること」、「目標を持つこと」の重要性も伝えてくれました。
技術面での質問に関しては、プロ1年目を終えた角田選手から「高校よりも自由な時間が増えたので、そういった時間を利用してワークアウトをしたり、黙々とシューティングに取り組んだ。自分が得意なスリーポイントは誰にも負けたくなく、1日200本のシュートを打った。」と言います。
最後に「今どんな想い?」(田口選手)と聞かれた関谷さんは「自分が抜けてチームが負けてしまったのを見て凄く悔しい」と言います。「今自分が出来ることを探してやる、それがチームの為に出来ること。こういう姿は絶対誰か見てくれているし、この後必ず自分の為になる。人の為に行動していると自分の為になる。関谷くんが大学でプレーしている時に必ず応援してくれる。」(田口選手)
「怪我をしても活躍されている選手のみなさんからお話が聞けて、自分も頑張ろうと思った。ありがとうございます。」(関谷さん)
4名の選手から激励を受け、充実した時間となったようです。
※オンラインで交流した4名の選手と関谷さん(上段右)
【参加選手コメント】
今回の企画を通して他の選手の経験談なども踏まえ、怪我をしてしまった後の行動について自分自身も学べる事が多かったです。怪我をして苦しい状況にあっても、先を見据えて今自分に必要な行動をする事は、様々なプロ選手が考えとして持っており重要な事だと私も思います。関谷くんには、どんな状況にあっても自分の目標を見失わずに頑張っていってほしいです!!(小室選手)
コート上ではもちろんですが、コート外での様々な活動におけるプロ選手の意義というのは、常に考えていかなければいけない部分だと感じています。今回のような選手会の活動はとても素晴らしいと思うし、このような機会を与えていただいたことにとても感謝しています。また、もし今回参加してくれた方がなにかプラスになるようなことを感じてくれていたら、本当にやった意味があったと思うし、良かったなと思います。(石井選手)
日頃サポートしてくれている大学生に感謝を込めて、プロ選手と触れ合う機会を
東京都八王子で活動している、とあるバスケットボールクラブ。男女合わせて30名の子どもたちとへ日頃指導をサポートしてくれている大学バスケットボール部の生徒たちと活動をしています。大学生の生徒たちもコロナの影響で練習が中断し、苦しい状況が続いていました。そんな中でも子どもたちの為に、Zoomで勉強を教えたりと大変頼りになる存在です。
「子どもたちはもちろん、日ごろお世話になっている大学生にもプロ選手と触れ合い、話をすることで夢を見させてあげたい」とクラブの代表者の方から応募を頂きました。
7月16日(土)八王子市内の体育館に、ベンドラメ礼生選手(サンロッカーズ渋谷所属/選手会副会長)、木村圭吾選手(新潟アルビレックスBB所属)が訪れ、クリニックと試合形式での実践練習、サインボールの贈呈等を実施しました。
体育館には選手のポジティブな掛け声「チャレンジしてみよう!」の声がたくさん響き、子どもたちからも常に笑顔があふれていました。
「じゃあドリブルしよう。みんな得意な手ある?」(ベンドラメ選手)
「右手!!」(子どもたち)
「よし、じゃあ左手でやろう!」(ベンドラメ選手)
「えー!!」(子どもたち)
こんな楽しい掛け合いも。
最後の質問コーナーでは「毎日自主練をしていたか」「ドリブルをうまくなるにはどうしたら良いか」「参考にしている選手は」など、公募ならではの自発的な質問がたくさん出ました。
ベンドラメ選手からは「負けず嫌いなので、隣のチームメイトに負けないように頑張っていた。競争することが大事」といった回答に、子どもたちは真剣に聞き入っていました。
参加した大学生からは「子どもたちへの接し方について凄く勉強になった」、子どもたちからは「もっとバスケットボールが好きになった」「もっとうまくなりたい」といった感想がたくさん聞かれました。
参加した木村選手は「自分の伝えたいことをきちんと言葉にして伝えることが難しいと感じた。ベンドラメ選手の場の作り方、話し方は大変勉強になった」とのことで、子どもたちにとっても選手にとっても特別な1日になったようです。
※子どもたちに指導するベンドラメ選手
※子どもたちに指導する木村選手
※子どもたちや大学生からの質問に答えるベンドラメ選手(右)と木村選手(左)
※子どもたち、大学生たちと記念撮影
【参加選手コメント】
「イベントに出席させて頂いて、大勢の子どもたちの前で話す事や、自分の伝えたい事を言葉にするということは難しいと感じました。ベンドラメ選手と一緒に参加させて頂いたのですが、場の作り方や話し方すべてがテキパキしていてとても勉強になりました。今回のイベントは大学生に指導のポイントを教えるというものだったので、自分なりに何をどう伝えれば良いのか考えて伝えることが大変でした。改めて自分の伝えたい事を正確に相手に伝えるということは大変だし、もっともっとこれから人前で話す事や子ども達に教える機会も増えると思うので、今回のイベントで感じた事を次に活かしていきたいと思います。今回はこの様な素晴らしい機会をありがとうございました。(木村選手)
鹿児島県の南の隅、バスケ部もない地域で子どもたちの夢のきっかけに
鹿児島県南の隅「南大隅町」。この小さな町には、高校、中学、ミニバスどころかバスケットボールをしたことがない子が多く、40分かけて隣の市まで移動すればなんとかバスケットボールが出来るという環境です。
「中学にも高校にもバスケットボール部がないから。小さな町だから諦めないといけないということが納得出来ず、可能性は自分で切り開いていって欲しい」という思いからクラブチームを立ち上げたのが、今回企画に応募してくれた先生です。
見たこともないプロ選手から夢を持つきっかけを与えて欲しいということで、7月23日(土)に石井 智大選手(ライジングゼファー福岡所属)がこの地を訪れました。
当日は約15名の子どもたちが集まり、石井選手からバスケの指導を受けたり、ミニゲームも実施。チームプレーやチーム愛の大切さが伝えられました。また、石井選手がダンクシュートを披露し、子どもたちからは大歓声が上がっていた。
石井選手は「バスケットボールは5人競技で相手のことを考えて支え合うスポーツ」とプレーだけではなく、「相手を想いやること」「支え合うこと」についても子どもたちに伝えていました。
応募してくださった先生からは「子ども達が、とっても楽しくバスケットボールを楽しんでくれましたし、石井選手のプレーに感動していました!素敵な時間が過ごせて、とても心に残ったと思います。感謝の気持ちでいっぱいです」と感想を頂きました。
子どもたちにとっても貴重な時間になってくれたようです。
※子どもたちと準備運動をする石井選手
※ダンクシュートを披露する石井選手
※子どもたちと触れ合う石井選手
※みんなで記念撮影
【参加選手コメント】
自分も生まれてからずっと九州に住んでいますが、九州の端っこ鹿児島の更に端っこにある南大隅町に行く機会はありませんでした。そんな中で今回のイベントに参加させて頂いて、初めは自分も子ども達も緊張していましたがバスケットボールを通して徐々に笑顔が増えていき、最終的には自分が子ども達に元気を貰っていました。バスケットボールをほとんどしたことがない子どもばかりでしたが、バスケットボールの面白さ、楽しさを感じてみんなが笑顔になっていく事がとても嬉しかったです。初めて南大隅町に行きましたが自然豊かで景色も綺麗でいい人達ばかりで南大隅町が大好きになりました!南大隅の子ども達にも負けず自分ももっと頑張っていきます!(石井選手)
「自分たちを必要としてくれる方々の力になりたい」。コロナ禍で子どもたちと触れ合う機会がなくなっていた期間を経て、この夏は2年振りに全国各地で子どもたちの笑顔が生まれました。 B.LEAGUE Hopeは、今後も日本バスケットボール選手会(JBPA)と連携し、「バスケで日本を元気に」を目指して参ります。
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