「クラブを救った宮城の人たちへの感謝を胸に、子どもたちに特別な体験を」仙台89ERS
2011年3月11日14時46分に発生した、「東日本大震災」 三陸沖を震源とする日本における観測史上最大であるマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北地方を中心に未曾有の被害に見舞われました。
B.LEAGUE Hope(以下、B.HOPE)は震災から10年が経過した2020-21シーズン、改めて「東日本大震災を絶対に忘れない、忘れてはいけない」という想いと、震災の教訓を、どのように活かして未来に繋げていくのかを考え、日本郵便株式会社様のご支援のもと、「B.Hope HANDS UP! PROJECT supported by 日本郵便」を立ち上げ、クラブとともに様々なアクションに取り組みました。
10年前に受け取ったたくさんの想いへの「感謝」からスタートしたプロジェクト
さまざまなアクションの中の一つが当時甚大な被害に見舞われた地域の4クラブ(岩手ビッグブルズ、仙台89ERS、福島ファイヤーボンズ、茨城ロボッツ)の活動をサポートする「地域アクション」です。
2004年の創設から地元の宮城県に寄り添って継続的に活動してきた仙台89ERSは、東日本大震災が発生した後、チームは活動休止。そして解散の危機に見舞われました。しかし、ファン・ブースターが中心となり、地元だけでなく全国各地から2万人近い署名を集めてクラブ存続を訴えました。その熱い想いを受け取って仙台89ERSは再び立ち上がり、翌シーズンには開幕を迎えることができた歴史があります。震災から10年を迎え、今シーズンはある想いを持って、様々な活動を行ってきました。
その活動の一つが「NINERS HOOP」というプロジェクトです。10年前のクラブ解散の危機を支えてくれた、地元「みやぎ」の方々へ感謝の気持ちを伝える活動を継続的に行ってきました。
クラブの愛称であるナイナーズにちなんで「ナイナーズの輪=HOOP」を宮城県内に広げながら、「つなぐ」をコンセプトに始まったNINERS HOOPですが、一番大きな取り組みは「みやぎ」を回ってホームゲームを開催することです。通常B2のレギュラーシーズンではホームアリーナで60%以上のゲーム開催が要件となっていますが、2020-21シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響に配慮し、この規約が緩和されました。そこでクラブはホームアリーナのある仙台はもちろんのこと、名取、塩竈、白石、加美、登米、南三陸と宮城県内各地を回ってホームゲームを開催しました。
南三陸町総合体育館
チームを率いる桶谷大ヘッドコーチはこう語ります。「僕たちが宮城県でプロスポーツチームとして活動する中で、常日頃から3.11に対する想いはあります。だからこそ、宮城県や仙台のために僕たちは常に精一杯プレーしなければいけないです。それがプロスポーツの存在意義だと思います。この街にいる以上、ただバスケットをプレーするだけではなく、自分たちで考えてできることがあるのではないかと考えています」その言葉を形として一つ体現したのが、宮城県内を回ってゲームを開催し、今まで支えてくれた地元への恩返しや感謝の気持ちを、バスケットボールを通じて伝えることでした。
合わせてクラブは特設ページをWEB上に開設し、選手たちが3チームに分かれて「みやぎの魅力伝え隊」となり、ホームゲームを開催する街に実際に訪問。試合観戦と併せて宮城県内の旅行を存分に楽しんでいただきたいという想いで立ち上げられた企画です。それぞれの街の名所を中心に様々な場所を訪問したり、街にある観光を選手自ら体験。加えて、それぞれの街にある飲食店とタッグを組んで特産品を使用したオリジナルどんぶりを開発し、販売も行いました。それぞれの街を訪問した様子はチームの公式YouTubeにアップされ、選手自らが宮城の魅力を発信した素敵な内容となっています。
・南三陸の美味しいどんぶり!みやぎの魅力伝え隊~南三陸編~【NINERS HOOP】
※上記は一例です。他動画は「NINERS HOOP特設ページ 」をご覧ください。
プロと仕様のコートに立てる夢のような時間を、未来を担う子どもたちに提供
このNINERS HOOPのプロジェクトでは、もう一つ大きな企画があります。「未来を担う子どもたちのため」という目的でスタートさせた、NINERS HOOP GAMEです。この企画は東日本大震災から10年目を迎える2020-21シーズンにスタートし、今後も継続的に毎年実施していく予定です。クラブは今シーズン、一般社団法人宮城県バスケットボール協会と「バスケ王国みやぎ」をスローガンに、宮城県のバスケットボールの普及・振興、育成・強化に寄与することを目的とした包括連携協定を締結しました。その一環で実現したのが、この企画です。
クラブとしてこれまでも公式戦当日のゲーム前に、地元の子どもたちを招いてエキシビジョンゲームを開催してきました。この企画ではさらに一歩踏み込み、参加してもらう子どもたちに特別な体験をしてもらいたいと、プロのゲーム仕様に近い演出を施し、仙台89ERSの選手が着用するユニフォームに近い特別なデザインのユニフォームを着用してプレーしてもらうことにしました。また、ゲームデープログラムにも参加チームと選手の紹介が掲載され、まさしくプロの選手になったような特別な体験ができる内容になっています。
2021年2月14日(日)、ゼビオアリーナ仙台にて第1回目のNINERS HOOP GAMEが開催されました。当日は仙台89ERSのバスケットボールスクールと地元のミニバスケットボールクラブの対戦が実現、30名の子どもたちが夢のような時間を過ごしています。試合前の選手紹介ではアリーナMCから一人一人名前を呼ばれ、チアが作った花道を仙台89ERSの選手同様に駆け抜けていき、ゲームがスタートすると公式戦と同じ音楽などの演出の中でプレー。参加した子どもたちは真剣な表情をしながらも、純粋にバスケットボールを楽しんでいる様子を見せていました。
また、このゲームの前にはディフェンス・アクションもコート上で行われました。この日は元ラグビー日本代表キャプテンにしてBリーグ応援キャプテンを務めている廣瀬俊朗氏も仙台に駆けつけ、クラブの代表である志村雄彦氏とともに、このアクションに参加しました。この日は、ドリブルをしながら被災者ごとに必要な備蓄品カードを届け、そのタイムを競う「B-DASH」。パスを受けてコールされた災害に応じた初期行動を取り、その後シュートを打って成功数を競う「ファスト・ショット」。この2つのアクションを実施。参加した子どもたちはチームメイトに対して声を掛けながら、全員で協力してアクションをクリアしつつ、時折笑顔を見せるなど楽しみながら防災に対しての知識を身につけている様子でした。
廣瀬キャプテンからは子どもたちに「助け合うことは大事。みんないいチームワークで取り組んでいて良かったです。バスケットボールで大切にしていることを、これからの生活や震災時でも大切にしてほしい」とアドバイスを送りました。参加した子どもたちは「再度、防災のことをしっかり学べました。地震はいつ発生するか分からないので、しっかり備えていきたい」、「ゲームとして楽しみつつ、それぞれ必要なものは何かが分かって良かった」などの感想を残してくれました。
クラブとしてこれからも宮城、そして仙台のために想いを持って活動を継続していく
選手たちもこの10年を迎えたことに関して、様々な想いを持っています。月野雅人選手は岩手ビッグブルズでもプレー経験があり、被災地で長い時間を過ごしている選手です。「このクラブは解散の危機に瀕したのちに、署名活動や様々なサポートを通して復活しました。サポートしてくれた人たちのお陰で自分はここでプレーしているので、様々な活動ができるのは嬉しい事です。岩手にいた時と全く変わりませんが、被災地に行くと本当にバスケットをしていていいのかという感情になる時もあります。その時に応援してくれている方に『ありがとう』『応援しているよ』と言ってもらえる。このクラブが宮城の人たちに役立っているのかなと感じ、本当に微力かもしれないけど明日への活力や元気を与えられるようなプレーをこれからもしていきたいと思います」と語ってくれました。
また仙台市出身の片岡大晴選手は「10年前、僕はここにいませんでした。志村社長の言葉の中に『試合ができること、来てくれるファンやブースターと一緒に戦えることは奇跡』とあって、僕自身もその想いをしっかりと受け止めてプレーしています。これからも地域のためというのは自分の中心としてあるので、その想いを持って毎日過ごしていきたいです」と言葉にしています。
クラブの代表である志村氏は今回のプロジェクトで作成したメッセージ動画で「手を取り合って、復興に向かっている姿を、スポーツを通じて見せられるようにしていきたい」と想いを口にしています。
これからもクラブとして大切にしている助け合いの精神を保ちながら、仙台89ERSは宮城県にしっかりと寄り添って、バスケットボールを通じて、様々な活動を積極的に取り組んでいきます。